ミノタウロス
舞台は、革命前後のウクライナ。豊かな地主の家に生まれた若者は、激動する時代にすべてを失いながらも、力強く、したたかに、生と死の挟間をかろうじて生きる。乾いた大地でくり広げられる壮大なドラマは、生半なヒューマニズムなど寄せつけない。
ミノタウロスとはギリシャ神話で、ミノス王の子にして上半身が牛で下半身が人間というモンスター。長じるにつれ凶暴の度を増し、最後はアテナイの王子に討たれる。主人公はまさに、革命が産み落としたミノタウロスだ。
予備知識がなければ、翻訳文学と見紛うだろう。80年代後半に突然あらわれ、当時の私のゆる~い読書に冷水を浴びせた、アゴタ・クリストフさんの『悪童日記』から連なる三部作を思い起こさせる。
そして、中上健次さん亡き後「日本文学は終わった」と嘯き(汗)、しばらくこの国の作家の作品を手にしなかった私は・・・予備知識がなかった。
わずか数ページ。すでに、これから展開するだろう酷薄な世界を予感させ、あれ?日本人の作品だったよな──と改めて奥付の著者名を確認する。佐藤亜紀・・・女性と知って、少し納得する。
佐藤さんのブログ「新大蟻食の生活と意見」を読む。舌鋒鋭く、楽しい。今回初めて、『鏡の影』をめぐる騒動を知る。なるほど。読まざるをない。
いずれにしても、『ミノタウロス』は読み手のこれまでの読書歴と世界観を問うている。全霊を傾けて臨むべき、骨太の作品である。
- 商品名: ミノタウロス
- 価格: ¥1,785
- 著者: 佐藤 亜紀
- 出版社: 講談社
- 発売日: 2007-05-11
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- 2008/02/02更新
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