タマムシ
タマムシ(昆虫)
あのぴかぴかした緑色で、真ん中に一本ラインの入ったきれいな昆虫。
…大昔、東京都二十三区内の、僕の住んでいるアパート六階の廊下に、「落ちてきた」のをママが拾ったのだったか。
ちびっちゃいコウモリが落ちてきたり、夏は職場のプールばりにしょっちゅうセミが臨終していたりする、僕の住むアパート。
その中に「落ちていた(笑)」連中のなかでも、あれはとびきり綺麗だった。
標本にしてとっておけばよかったけれど、ママが拾ったそのキレイナモノを、僕は今でも覚えている。
つらつらとキーワードめぐりをしていたら、「志賀昆虫普及社」とか「昆虫」とか面白いところにたどり着いて、「ああ、うちにそんなのがきたこともあったな」と思い出した。
虫かごにいれて、ママにすすめられるまま、学校に持っていったのだったか。
僕はバッタなんかも好きなのだ。アマガエルを飼っていた頃は捕まえるのにいそしんだものだ。
まあバッタは別にぴかぴかしていないし、そこらへんを大挙してビョンビョンギチギチ跳んでいたからめずらしくもなかったけれど、でもあんな風に跳躍できるなんてすごいなぁと運動オンチな僕は羨ましく思っていた。
そんなある日に、やってきた緑色のキレイナモノ。
カナブンやハナムグリがぴかぴかしているのは知っていたけれど、ああいうものはどこかずんぐりむっくりで、僕にとってはあまりかっこいいイメージの昆虫ではなかったから…その緑色のキレイナモノ(しかもシャープなラインで結構かっこいい!)を見たとき、こんなものが生きていて、どこかの空を飛んでいるのかとうなってしまったのだ。
僕は毛がもこもこしているタランチュラなんかが実は好きなのだが、奴らは勝手に生きている気がして大変よろしい。
イヌやネコなどはどこか人間と折り合いをつけて生きているが…タランチュラや両生類・爬虫類の奴らは人間なんてまったく気にも留めていなさそうな気がする。
嫌われようがどうしようが、別になんともなさそうだしね。
…どこまでも突き進んでいって欲しいものだ。
人間なんかに近寄られたら、ぎゃーとかいって叩き潰されるんだしね。
僕は遠くから見てるだけでいい。
どっかに僕が想像もできないようなすごいやつがいるのかねえ、なんてそんなことを妄想しながら…ひらひら水面をたゆたうチョウチョを眺めるだけで、僕はいい。
だから、しぶとく頑張ってってくれな…なんて思いながら、庭の薔薇にやってきたもこもこの毛虫くんをひっぺがし(笑)、代わりにレタスに乗っけてみるのだ。
飛べるから自由だなんて思わないけれど、でもやっぱり人間としては羨ましい。
虫たちは、僕の知らないすごい世界を知っている気がする。
…あの緑色のぴかぴかした綺麗なやつは、きっと違う宇宙からの使者だったのだと、僕は未だに信じているのだ。
それ以来、ぴかぴか緑のタマムシさんには写真でしか出会っていない。
でも神津島でぴかぴかしてないウバタマムシさんには何度か出くわしたから、きっとタマムシ一族はまだ日本でちゃんと暮らしているのだろう。
…科学博物館にある古代にいた30センチもあるような巨大なトンボの復元模型なんかを見ていると、そんなのがブンブン飛んでいる世界を想像してしまう。
僕にはそれを追いかける機会はないだろうし、それに追いかけられてしまう機会も多分ないのだが…僕はついつい護身用投げ網のカタログを見てしまうのだった。
- 2008/03/15登録
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