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知られざる鬼才、マリオ・ジャコメッリ / 東京都写真美術館 (Mario Giacomelli at Syabi)

  • 知られざる鬼才、マリオ・ジャコメッリ / 東京都写真美術館の画像

5/6まで写美にて開催中、イタリアの巨匠マリオ・ジャコメッリの日本ではほぼ初めてといえるまとまった個展です。



これは、「写真」なのでしょうか

「詩」または「絵画」ではないかと

故に説明すべき言葉がみつかりません!






生と死を、白と黒で生涯描ききった 

…ただただ、うつくしい




- - - - - - - - - - - - - -
(追記)

マリオ・ジャコメッリは1925年、中部イタリアの東海岸の古い伝統を残す小さな街、セニガリアに生れます。9才の時父を失い、10代の半ばから家計を支えるため働き始めますが、多感な青年は絵や詩の創作を始め、独学で写真を始めます。彼は生涯印刷工房で働き、写真で生計を立てることのない土曜の午後と日曜日にだけ撮影をするアマチュア写真家でした。生前、欧米では高い評価を得ていましたが、日本で紹介されることはなく「知られざる」写真家でした… というのを、私はこの展覧会で知りました。PHAIDONからでている写真集は、大抵の美術書店にいけば目立っておいてあるし、とてもポピュラーな写真家で自分だけが知らなかったのかとずっと思っていましたが、そんなことはなかったようです。


どうにかして自分の「世界の見方」を表現したい、という意欲がとても強い人だったのではないか、と思うのです。代表的な作品、若い司祭を撮影した「私には自分の顔を愛撫する手が無い」は当初「若き司祭たち」というタイトルだったところ、司祭達はそのあどけない子供のような表情とは裏腹に、決して自らの子を持つことはなく生涯人々の苦しみに対峙する道を行かねばならない、その運命を「自分の顔を愛撫する手がない」と改題したそうです。…これは、なんとなくジャコメッリ本人にも通じるのではないかと思うのです。なぜなら表現にとりつかれ、世界を「写真の目」でとらえるようになった作家には、混じりけのない自分自身の目はもうないわけです。遺作となった「この憶い出をきみに伝えん」には自分の分身かのように仮面が登場しますが、人生の終わりになって自分の生きてきたまなざしを表現世界の向こう側からカメラを向ける自分の方にひっくり返したかのようです。仮面は作家の分身としてリアルな(カメラ抜きの)「目」を作家に写真の中で見せてくれたのかもしれません。


今回の展覧会では全てジャコメッリ本人がセニガリアの自宅の暗室で焼いたものだそうです。中にはプリントに折れがあるものもあったり、同じネガで焼き具合が色々あるものなどがあったりするのですが、その辺も絵画を見るような物質感を感じぐっときてしまいます。上述の写真集は、生きているうちに必ず手にいれようと思いながら10年以上経ってしまいましたが、なぜ自分自身と生き方について悩んでいた多感な頃に購入して見ていなかったのだろうと、今更とても後悔です。誰に頼まれることもなく(職業写真家ではないので)、ただ自分のためだけに撮り続けられた写真達。それなのにそこには生と死と、自然と人工と、男と女と、自己と他者…人生の様々なテーマが美しく描かれています。多くの人に見てもらいたい展覧会です。



東京都写真美術館 
2008年3月15日(土)~5月6日(火)
http://www.conversation.co.jp/...
http://www.syabi.com/

知られざる鬼才、マリオ・ジャコメッリ / 東京都写真美術館

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プーク
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  • 2008/03/24更新
  • 2008/03/23登録
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コメント (15)

最新コメント5件

2008/03/25

プーク 祥さん、間違いなかったですか?(笑)良かったです!ジャコメッリは自分がたまたま友達(↑)に教えてもらって知っていただけで、それで本屋でも目についていたのだと思われます、すみません…どうか気になさらず。。「情報」も「写真家」もあふれているので、自分が本当に好きだと思えるものに出逢うのって貴重だと思います。私が友達から出逢えさせてもらったように、祥さんにも出逢いをつなげられて良かったなって、それが嬉しいです。今でも多感ですか、私…嬉しいような恥ずかしいような、ですね(笑)

2008/03/30

はごたえ 今日見てきました、まりお。どれも小さい画面なのにエネルギーがすごくて、やはり、なんというかエグさの中に美しい光がさしている感じ?が、ものすごく個性的。あのような被写体から目をそらさないで、撮影し、作品にし、発表してきたことに敬意を払うよ。大人になった私は、なぜか大地の作品に強く心揺さぶられました。それにしてもこの作家が何故今まで東京で紹介されることがなかったのか、フシギ。grazie,Mario.

2008/03/31

プーク おお、観に行ってきたのね。うん、確かに個性的だと思う…ドキュメンタリーの中に表現主義的な要素があって、独特の世界観だよね。やはりどこか趣味的なスタンス(良い意味で)があったから成立し得た世界なのではないかな。現代では趣味が仕事になる例はいくらでもあるけど(ネットで発表してるうちプロになったとか)、戦争とか世相が危うかった20世紀半ばにこのような活動は、表にでにくかったのかもね。だからこそ強い!のだけど。大地の作品に惹かれたのか…それは大人だー。よい再会だったね、with Mario

2008/05/25

もえぎ  4月にTV新日曜美術館のアートシーンで紹介されて気になっていましたが展覧会には行けずしまいでした。http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/...「ただ自分のためだけに撮り続けられた写真」というプークさんの言葉に呼応するかのように本日放送の作家:辺見庸による語りはかなり重く暗いもの。私には久しぶりに辺見自身の足元をも掬うことになりかねない真摯な自己批判を垣間見たようで動悸を覚えました。辺見は番組の最後に、 諦念から諧謔へ というような言葉で締めくくったように私には想われ、少し救われたような気が。この写真集、私も欲しいです。

2008/05/28

プーク もえぎさん、コメント有難うございます。私は新日曜美術館の方を見逃していました…。展覧会には辺見さんのテキストが添えられています。→(PDFで読めます)
ジャコメッリ展によせて
めぐる〈生の時〉と〈死の時〉−蠱惑する閾の風景 辺見 庸 私は購入していませんが、今回の展覧会カタログは日本語のテキストや年譜もついているので、こちらもよいかもしれません。(KWで書いた写真集の方が掲載作品は多いのですが) 「諦念から諧謔へ」、ですか…深いですね。あらためてハッとしました。私も早めに写真集を入手したいと思います!(まだ購入していませんでした…)

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