アントニオ・ネグリ
ネグリはネグリジェではない
上野で花見のつもり、芸大のキャンパスに寄ってみた。旧奏楽堂の辺りから、塀に「ネグリさんとデングリ対話」というヘンチキリンなチラシが貼ってある。29日、30日芸大美術学部構内、とある。もう一方のチラシに「アントニオ・ネグリ氏講演会――新たなるコモンウェルスを求めて」という東大安田講堂での講演とシンポジウムの案内。ネグリ・ふー?
チラシなどによると、イタリアのマルクス論を中心とした政治哲学の研究者。また、イタリア全土を揺り動かした女性・学生・貧民・失業者等、社会的に弱い立場に置かれた人びとによる新しい社会運動「アウトノミア(自立)」を理論的に統括した社会派知識人。「赤い旅団」によるイタリア元首相アルド・モロ誘拐暗殺の嫌疑をかけられ逮捕・起訴される。その後、事件への直接的な関与はなかったことが判明するが、一方で、その体制批判的な言論活動による政治活動への影響力の責任を問われ有罪に……。獄中の立候補、当選、議員特権の剥奪、フランス亡命……。ドラマの主人公に相応しい、ちょっと怪しげな人物。国際、文化会館が今回招待して、イベントを企画した。芸大のそれも、この企画の一つ。ところが、ネグリは来なかった。21日の各新聞に、ネグリ氏が来日を断念、との記事が載っていた。実際とは、彼が断念したのではなく、日本政府がこの「危険人物」の入国を拒否したに違いない。著書に「芸術とマルチチュード」など(未見)。
ということで、ネグリ氏については分かったが、芸大の構内に入ってみても、何の企画は一向に理解はできなかった。中庭では、即興のペインティング。奥のステージではドラム、エレキ、ベースの3人が演奏を始めた。ボリューム最大、どこか中東風のフレーズが入ったり……。さらに校舎を進むと、「身体と衣料のポイエーシム」とかいうシンポジウムの案内があるが、主催者と訪問者が少し短めの飛び縄を跳んでいる。映像プログラムというのは、ネグリ氏関連から、三里塚あり、「山谷(やま)――やられたらやりかえせ」といった題目もある。入ってみて暗い闇に目が慣れると、2人ほどが見つめていたスクリーンでは沖縄の「やんばるの森にヘリパッドはいらない」という米軍のヘリパッド建設中止を求める運動を撮った映像を流していた。スクリーンでは叫んでいた。「沖縄は1879年に日本政府の植民地にさせられ、以来、植民地として扱われてきた……。われわれはこれに反抗するのだ」、と。
久しぶりに70年代の残滓、香りをかいで中庭に戻ると、庭には古びた、しかしドッシリと根を張った木が聳えていた。何という木だろう。上野の花見とは、遠いところまで来た、という感じだった。
- 商品名: 芸術とマルチチュード
- 価格: ¥1,995
- 著者: トニ ネグリ
- 出版社: 月曜社
- 発売日: 2007-05
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- 2008/03/30登録
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