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チチ ボース

父 ボース―追憶のなかのアジアと日本

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父が坊主なのではない。ボース。つまりインド人革命家であったラース・ビハーリー・ボースについて、娘の樋口哲子さんが中島岳志氏のインタビューに応じ、聞き取った回想を軸として、ボースならびに戦前の日本とアジアの各国との関係などにも触れている。中島氏は、『中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義』を06年に上梓しているが、その際に、哲子さんに一度インタビューしており、是非、その話を残すことの必要性を説き、白水社がこれに応じた、というものらしい。
インドの独立運動とボース、というと一寸ややこしい。というのも、「インド国民軍」を率いた、もう一人のボースがいる。スパース・チャンドラ・ボースだ。ボース自身、当初、「国民軍」を率いていたのが、日本の傀儡とみられることで求心力を失い、もう一人のボースに、その座を譲った、というのが史実であるらしい。私自身、そのボースと、「中村屋のボース」とが同一人物だとばかり思い込んでいた。
新宿・中村屋のインド・カレーは、亡命して地下生活をしていたボースが、匿って親切にしてくれ、なおかつ妻・俊子さえ得た、中村屋=相馬愛蔵・黒光夫婦への贈り物であった。右翼の大物と言われた頭山満や杉山茂丸も登場、残された写真なども珍しい。
英国の植民地であったインドの独立に、日本の力を借りることに、ボースの矛盾相克などもあったようだ。「八紘一宇」は掛け声だけで、帝国主義的な侵略者となった政府・軍部とは異なり、アジアの民族主義に理解を示した人々が戦前の日本にもいたことは記憶に残しておきたいものだ。

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