アタラシイタイヨウノショ
新しい太陽の書
まだ、これの感想を書くような読書レベルにはないのだが、100キーワード到達の記念に。「読んだ」本だけが全てではないという意思の表れ。または全ての本は未読であるという意見の表明。
ジーン・ウルフの小説。
日本語訳は、
『拷問者の影』
『調停者の鉤爪』
『警士の剣』
『独裁者の城塞』
の4冊。
弱々しい太陽とともに滅びへの道を辿る、惑星ウールスの南半球は、<共和国>によって支配されていた。共和国の拷問者組合に育ったセヴェリアンは、死を志願する囚人に手を貸すという大罪を犯し、組合を追放されてしまう(また同時に、この物語は支配者として玉座に還ったセヴェリアンの回想として語られる)。組合からの贈り物として譲り受けた斬首剣<テルミヌス・エスト>を携え、北へ向かう旅を始めたセヴェリアンに、人々と出来事が、運命のように絡み合う。
運命的というのは誇張ではない。偶然出会ったと思われる登場人物は、読み進むうちに、皆、セヴェリアンをどこかに導くために配置された舞台装置であることが判る。悪く言えば極端なご都合主義にも読めるのだが、これは、ウルフが複雑長大な物語世界を折り畳むために使った方法だと思われる。おそらく真面目に書いたとしたら、この物語は今の分量の数倍になってしまうだろう。
現在絶版状態であり入手は困難だが、それほどの稀覯本というわけではない。頑張って探せば古本で、定価の5割り増し程度で買えたりするかもしれない。
もしこの本を古書店で探そうと思われている場合は注意が必要だ。
この本は、ハヤカワ文庫の空色の背表紙の棚に、置かれている。
つまりこの物語はSFなのである。
もっと言うと、
ファンタジーの筋書きで、SF的な事実が、ミステリの手法で書かれている。
たとえば…
拷問者組合が暮らす<塔>は、「厚い壁」「第1層」などの記述や「チェンバー」などの名前の名残から、どうやら廃棄された宇宙船らしいことがわかる。
なぜ、打ち捨てられた宇宙船に人々が暮らしているのか? 過去に何があったのか? しかし、主人公であるセヴェリアンは、世界の外のことを知り得ないので、秘密を我々に教えてはくれない。無数の固有名詞と描写が投げ出されたままになっている。
「この記述は何のことを言っているのか?」
「ここでAと書かれていたことがここでBと書かれているのは、なぜか?」
「Xという仮定を立ててこの記述を読めば、辻褄が合うのではないか?」
読者は、「書いてあること」を読むと同時に、「書かれていないこと」を読む能力を、極限まで駆使しなければならない。
*
一応、最後まで読んだけれど、ほとんど意味がわからなかった。
読解力もSF力も足りないのだろう。
そういう意味で、この本は「未読」である。
次読むことがあったなら、もう少し別な(ましな)読み方ができるかもしれない。しかしそのときも、私はまた、読み終えたこの本を「未読」の棚に入れるだろう。
一つ一つが、独立した、その場の「情緒」を変化させるだけの時間つぶしに過ぎないのなら、私はSFもミステリも読みはしない。すべての本は、より大きな発見をするために砂の中に隠されている。
----
ネビュラ賞、ローカス賞、キャンベル記念賞、世界幻想文学大賞を受賞。
是非、復刊をハヤカワにお願いしよう。
http://www.fukkan.com/vote.php3?...
----
[021015]
やっと、復刊ドットコムの投票が半分(50/100)を越えました。先は長い。
トールキンやル・グイン好きな人ならきっと気に入ると思います。『ゴーメンガースト』三部作まで重版されているのに、この本が品切れというのはやっぱおかしいヨ! みんなも投票ダ!
このキーワードを共有する
-
メイン
コメント (6)
最新コメント5件
2002/07/20
未有音 何度も読みたい本はあるけれど、再読までに果たして自分はどれだけ変化してるだろうか心配で読めない、というのが正直な所ですねぃ…。
2002/07/21
NUE もっと正直に言うなら、新刊の洪水と仕事に押し流されて二度読む本はほとんどない。本の背を見ながら「二度と読むことはないな」と。
2005/09/23
Rume ようやく復刊されましたね。買います。
2006/09/15
未有音 ちょっとアマゾン見ましたがすでに『拷問者の影』は入手困難で1,700円とかついてる…うーむ。重版で全部買い直しましたが、あと1セット買っておくべきでした(売るのではなく人に貸す本として)
Rume 品切れになっても増刷しない予定だと聞きました。今2巻を読んでる途中です。他の本に浮気しちゃってなかなか進みません。
- すべてのコメント »
つながりキーワード (4)
ジーン・ウルフ「ケルベロス第五の首」
- (Rume)
国書刊行会から未来のSFシリーズとして刊行された中の一冊。地球の彼方にある双子の星サント・アンヌとサント・クロアを舞台にする3つの中編小説からなる小説。この3つの物語は微妙にリンクしあって...
ネビュラ賞
- (らぼんでぃす)
アメリカSF&ファンタジイ作家協会が、前年及び前前年に発表されたSF、ファンタジーを対象に、投票によって選ぶ賞。もともとはSF中心の賞であったが、近年はファンタジー作品の受賞が増えている。S...
マイケル・ムアコック
- (('w'))
エターナルチャンピオンシリーズという、壮大かつ複雑なヒロイックファンタジー小説群を書き上げた。 多元宇宙や各シリーズの主人公が永遠の戦士の各相であるという、哲学的& SF 的世界観と、魔剣群...
ハイペリオン
- (92)
SFの超大作。 「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」「エンディミオン」「エンディミオンの覚醒」の4部作(だと思う)。第3部のエンディミオンがようやく文庫化されたので購入。 いずれも分厚...










