代々木会館 ~傷だらけの天使
探偵ものには雑居ビルがよく似合う。
往年の名ドラマ「傷だらけの天使」では、ショーケンと水谷豊が「エンジェルビル」という雑居ビルのペントハウス(屋上のほったて小屋)で暮らしているという設定になっている。ドラマの本編を見たことがなくても、白いヘッドフォンをかけたショーケンがトマトやコンビーフをむさぼるオープニングは、一度は目にしたことがあることと思う。
そのロケに使われたビルが、この代々木会館である。
施工年は不明。「傷だらけの天使」から30年以上が経ち、代々木会館もかなりの老朽化が進んだが、どうも利権が分散しているようで、建替えの是非をめぐり何年も膠着状態にある。
そういった特殊な事情のため、代々木駅西口すぐという良い立地であろうのに、半廃墟状態となっている。
1階のパチンコ屋、2階の飲食店街、3階のビリヤード場など、ほとんどのテナントはすでに立ち退き済みだが、1階の立ち蕎麦屋、3階の特殊本屋(中国の書物ばかり山のように扱っている)が現在も営業中。
5階以上のフロアはすでに本物の廃墟で、蛍光灯も灯されていない。 階段の先は闇。
そしてすでに施錠されており、上階へは行くことができない。
屋上ペントハウスは特に傷みが激しい。外壁はほとんど剥落しており、一部窓にひっかかるようにしてかろうじて残っているところがある、という有様である。
さて、ドラマの話になるが、貧乏で魅力的な二人の若い男が屋上で暮らしている、という設定がまず良い。
主人公修を演じるショーケンがキラキラしている。焼けた肌に白すぎる前歯が松崎しげるにも見えないこともないのだが、時々はっとするほど格好いい瞬間がある。
修を「あにき」と慕う亨の水谷豊が犬のようでかわいい。チンピラみたいなオープンシャツを着て、いつもポマードたっぷりのリーゼントをとかしつけている。
エージェント綾部貴子の岸田今日子の美と存在感が奇跡である。なにしろ初登場のシーンがいい。留守番電話の声、あの声のみの初登場シーンである。痩せ我慢をして綾部からの仕事を断り続け、金も尽きた修に、「お腹空いてるんでしょう?修ちゃん。」
この一言が、今後展開される二人の関係性のすべてを物語る。
第一話の最後のセリフもこれと対応している。
「飢えているほうがすてきなのよ、あの子は。」
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