立川談春
2008年6月29日の歌舞伎座で談春は『芝浜』を演じることで談志に引導を渡したのか。
談志の「芝浜」を知るものにとって、この日の談春の『芝浜』は特別な意味を持つことになるかと思います。
正直に言えば、この日の談春の『芝浜』の出来が良かったかどうかということはどうでもいい。
談志が帰ってしまった歌舞伎座で、談志の『芝浜』とはまったく違う『芝浜』を高座で演じたことの意味は大きいと思います。
単純に考えても、落語の常識から言えば季節外れの『芝浜』をやるには、何か「決意」とか「覚悟」とかいったものが必要だと思います。
その上、師匠の十八番を親子会でやるというのは簡単な「決意」や「覚悟」では出来ないでしょう。
もしかしたら談春はこの日『芝浜』をやるつもりじゃなかったんじゃないか?
サゲの後、談志が帰ったことを客席に詫びる談春の声は少し涙混じりだった気がします。
いずれ、談春流の『芝浜』の評価が聞こえてくるでしょう。
「私にとってリアルな『芝浜』はこうなんです」という談春の声は確かに聞こえました。
談志はこの歌舞伎座公演の記者会見で「古典に関しては(談春は)俺よりうまいかもしれない」と言いましたが、
これは談志流のプロモーションで、談志はしばしばこの種の発言をしてきました。
志の輔を「立川流の最高傑作」と言ったり、志らくには「俺と同じ価値観を持った同士」と言ったり。
辛辣で皮肉ばかり言うと思われている談志だけど、実は褒め上手。ヨイショ上手です。
談春は古典落語への愛が深すぎるのかも知れない。
談志のように気を抜かずに手を抜く芸が身に付いたら凄いことになるかもしれない。
2席の予定を1席だけで高座を降りた談志は本当に体調が悪く見えました。
楽屋入りするところを偶然見かけた談志は顔面蒼白でした。
談志自身が言っていましたが、昨年末の「芝浜」以降、喉も体調も回復しないのでしょう。
談志が言う「体調が悪くて」はもうお馴染みの台詞になってしまいましたが、もしかしたらという気がしなくもない。
でも「今日ここに来た客は“俺は最後の談志を見たよって”言うのかもね」なんて冗談じゃない。
談志の高座を見たことも聞いた事もない不幸な日本人がいくらもいます。
そんな不幸な人は今すぐ談志の公演予定を調べてチケットを取らなくてはいけない。
それぐらいの猶予は与えてやって欲しい。
関係ないけど、サゲのあと観客の拍手のタイミングが早すぎた。
「夢になるといけねえ」と言った途端に拍手をするのはどうかと思う。
1秒、いや0.5秒早い。
クラシックのコンサートでもよくいますよね。
「オレはこの曲がここで終わるのを知ってるんだゾ」とばかりに間髪置かずに拍手するバカ。
特にこの日の談春の『芝浜』は、もしかしたら「夢になるといけねえ」の後も続くんじゃないかと一瞬思ったので。
- 商品名: 赤めだか
- 価格: ¥1,400
- 著者: 立川 談春
- 出版社: 扶桑社
- 発売日: 2008-04-11
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