「もの」ではなく「こと」を作るデザイナー
原 研哉
デザイナー。
「MUJI」のアートディレクション、枡一市村酒造場の酒ボトル「白金」、松屋銀座のリニューアル、長野オリンピックのプログラム、愛知万博のプロモーション、「リ・デザイン―日常の二一世紀」「HAPTIC」などの展覧会制作・・・
原さんの手がけられたことは、どこか、はっとさせられ、目の前にありつづけたもの、見慣れてしまって思考しなくなってしまったことについて、あらためて思いをはせさせられるような、記憶に残る仕事であるように思います。
同郷の友人・原田宗典の文章に触れ、「かなわない」と思って、その道に進まなかった、と言う原さんですが、その数々の著書は、心にじんわりと染み入り、深いところで、激しく、しかしながら、静かに揺さぶられます。
サントリー学芸賞を受賞した「デザインのデザイン」に、こんな文章が載っています。
『時代を前へ前へと進めることが必ずしも進歩ではない。僕らは未来と過去の狭間に立っている。創造的なものごとの端緒は社会全体が見つめているその視線の先ではなくて、むしろ社会を背後から見通すような視線の延長に発見できるのではないか。』
原さんの紡ぐフレーズは、単に「デザイン」ということについて考えさせるにとどまらず、何か、もっと普遍的なところでも、本質に深くつきささる洞察に満ちており、彼の仕事が、デザインに携わる人だけではなく、より多くの人の記憶にくっきりと刻まれるのは、その鋭い洞察がストイックに表現されていることが、一つの大きな理由なのではないでしょうか。
今回、KENZOは、その原研哉さんをアートディレクターに迎えて新しいフレグランスを創り、パリでお披露目しました。
ボトルとパッケージのデザインの部分を担当された原さんは、完成したプロダクトに触れて、こう言いました。
「ボトルに香りが入ってきた」
ボトル=香水の容れ物、というのではなく、具体物に由来していない、このフレグランスの香りが、ボトルののりしろの部分に入ってくるような、ボトル自体が香るような、そういう感じがして、実感が沸いてきた、と。
そして、その原さんの言葉を、私たちKENZOスタッフは、KENZOブランドのフレグランスの創り方を、改めて自分達で発見しなおすような、そういう、新鮮な驚きと感動をもって聞いていたのでした。
日本では、秋に登場予定。
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