ワヤン
インドネシアの伝統的な影絵芝居ワヤン・クリが特別展示(10月19日まで東洋館で)されるのを機会に、ワヤンの上演会が1日夜、東京国立博物館平成館ラウンジで行われた。ガムランの演奏をバックに、影絵の人形が大きく、あるいは小さく、互いに剣を揮ったり、激しく撃ち合う。「影」は余りぼんやりすることなく、その形が鋭角的にそして細密に描かれて見える。本来はヒンズー寺院などで行われており、舞台と観客席は高低差があるのだろうが、この日の会場は、平成館ラウンジの平面であるため、満員であった椅子席から舞台の下半分が見難いことや、劇の進行を日本語で同時に説明しているのだか、その日本語が難渋であることもあって、観客は櫛の歯が抜けるように散っていったのは残念だった。
この「ワヤン」。ウイキペディアでは、次のように説明している。「ワヤン・クリとは、インドネシアのジャワ島やバリ島で行われる、人形を用いた伝統的な影絵芝居、またそれに使われる操り人形のことである。人形を操る人をダランと呼ぶ。芝居はヒンズー寺院での祭りなどで行われ、インドの古代叙事詩「マハーバーラタ」や「ラーマーヤナ」などが主な演目である。10世紀には既に演じられていたことが記録されている。ワヤン(Wayang)は影を、クリ(Kulit)は皮を意味する。2003年には、ユネスコの「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」において傑作の宣言を受けており、2009年9月に予定される初の登録での世界無形遺産への登録が事実上確定している。日本ではワヤンとも呼ばれているが、ワヤンには他に、人間が演じるワヤン・オラン、人形劇のワヤン・ゴレなどがある」。
今回、舞台の裏で人形を操っているの様を見ることができたのは収穫だった。当たり前のことなのだが、影絵にするのだから、光源と人形、スクリーンの関係があって初めて芝居が成立し、進行する。用いられる人形は、水牛の革から薄い板状に切り出し、細かいノミで細部を美しく彫りぬいてあり、操作をするための棒も、水牛の角で作られているのだという。確かに、それでなければ、あのようなシャープな映像にはならない。すべて1人の人形遣いが操っているので、次に遣う人形を、どのような順序で手元に置き、送っていくのかが難しそうであった。
このワヤン。10世紀ごろ、ヒンドゥー教とともに古代インドの壮大な叙事詩「マハーバーラタ」「ラーマヤナ」がインドネシアに伝えられ、民衆の間に広まってきた、という。長い歴史がある。劇の始まるのに先立って、日本ワヤン協会の松本亮さんが10分間ほどの簡単な説明をしてくれたが、そもそも初めから影絵であったわけでなく、話は絵巻物としてまずあって、その絵巻物を語るという芸があり、やがて影絵物語へと変遷してきたようだ。
歴史絵巻というのは、その国ごとの固有の歴史を語っているだけに、馴染みの薄い国の歴史では、理解が簡単でないことも事実だ。
- 2008/08/03登録
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