定規 第2章 (心電定規)
もうひとつ、これは今も使用している物だ。
技師学校時代、撮影実習で実習先の先生から頂いた物だ。
技師学生の2年生から実際に病院に出て撮影実習をさせてもらう。
そこには、常勤の技師が10名程度おり、そこに自分たち学生が4~5名お世話になる。
そこには怖い整形外科医が2名、内科医師が数名、循環器科の医師が1名。
技師室やCT室等々に出入りしていた。
技師室の中央にある読影室で次々撮影されたフィルムをシャーカステンに挿しては
読影していく。
もちろん病棟や外来にも直接フィルムは運ばれそちらで診断をする先生もいる。
(むしろそちらが多い)
こうして目の前で読影してくれる先生は学生の直接指導もしてくれる先生なのだ。
衛生科の隊員が大半の同期の中、高射特科のミサイル部隊しかも、
通信整備出身の自分は、「解剖生理」が苦手でなかなかついて行けなかった。
関節や骨の角度がどうのこうの・・・・というのが今一つ分からなかった。
その程度で撮影するわけだから、上がった写真はとても診られた物ではない。
恐る恐る・・・シャーカステンにフィルムを挿すと怖い整形の先生が飛んでくる。
写真を見る時間2秒以内!「あかんな~銀狐はん、これじゃあ銭になりまへんわ」と
フィルムをフリスビーのように飛ばす。
また、不思議と自分のフィルムは飛距離が出た。
患者さんが待つ廊下まで飛ぶこともしばしば。
100回に1回くらいまぐれで上手く撮れると、
「おい、この写真から何が見える?」と質問。
「そんなの俺に分かるわけないだろ!」なんてことは間違っても言えないので、
黙っていると、「体の外から内臓と骨を見ながら撮れ!」とまた怒られる。
ある日、心電波形と胸部写真を一緒にみていた循環器科の先生の横を
たまたま通った自分はつかまって・・・・これまた質問の嵐。
先生方からかなり目をつけられていたようで、
他の同期より多く名前を呼ばれてしごかれた。
そして実習時間も終わり技師室、撮影室を掃除していると
質問攻めにした先生がくれたのが、心電図用の定規だ。
「これの使い方を次の実習までに調べてこい」と手渡してくれた。
「あの・・・・実習は明日ですが・・・・」
「ハハハハ・・・調べてこい」(鬼)
翌日調べた使用法を説明すると「よく調べたなあ、これやるよ」
罵倒の中しごきにしごかれた実習も卒業で終了する。
卒業時の謝恩会では先生方が一つのテーブルで酒を飲んでいる。
引きつった笑顔で酒を注ぎに行くと「出来の悪い銀狐が来た」と囲まれ、
酒の肴にされた。
「先生方は俺を目の敵にしてたでしょ?」
「そうだよ」簡単にしかも全員が答える。
「そんなに態度悪かったですか?」
「バカ」一番怖かった整形の先生が、「お前は同期の中で数少ない一般兵」
「勉強の成績とは別に医学に関しては素人の最低レベル」
「追い込んで勉強させるしかないんだよ」
酔いが覚めてしまった。
あの嵐の実習の勝利品は腕と心電定規。
卒業して約15年今もあの憎らしい・・・・いや、ありがたい先生方を
思い出しながら、定規を使っている。
でも、憎らしい先生方だったが、我々学生が撮った写真でも、
白手袋をはめてフィルムに指紋が付かないようにしてくれていた。
後から分かったことだが、医師でない自分に心電波形を読む力を養う必要はない。
- 2008/08/06更新
- 2008/08/06登録
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