アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち / 森美術館
フランス現代美術を代表する女性アーティストのひとり、アネット・メサジェの本邦発の大規模な個展が11/3まで、森美術館にて開催されています。(本国パリのほかフィンランド、韓国を巡回)メサジェは2005年のヴェネチア・ビエンナーレで金の獅子賞を受賞したことでも有名ですが、その受賞作品の一部をはじめ代表作が勢揃いした見応えのある展覧会です。
メサジュは父親の影響から写真の制作をはじめました。写真作品の受賞によって60年代に南ヨーロッパ、香港、日本、インド、イスラエル、米国等を旅行し、いかに自分の世界が狭いものだったか気付かされます。戦中生まれのメサジュにとって、60年代当時、女性のアーティストとして活動するのは困難なものでした。そんな中、尊敬する作家ジャン・デュビュッフェと彼を通して触れたアール・ブリュットの世界にとても影響を受けます。それらの体験からメサジュの表現世界は、今まで育ってきた環境から遠く離れた視点に開かれるのです。
70年代から、絵や写真、新聞の切り抜きや拾い集めたオブジェなど、日常の中の様様な素材を用いて制作活動を続けるメサジュ。作品のテーマはその時々の時勢や個人的なことなど、ウィットに富んだ「含み」で作品の中に混入させているような印象です。2002年のドクメンタ11に出品され一躍メサジュの名前を国際的に轟かせた作品「つながったり分かれたり」も、狂牛病をモチーフにしていながら、ぬいぐるみのようなフォルムのオブジェのインスタレーションは、禍々しいものにもユーモラスにもとられます。聖と俗、ユーモアと恐怖、愛と悲しみ、女性と男性、動物と人間、子供と大人、生と死、表と裏… 自分自身の作品を「暗いという人もいれば、いつも可笑しいわねという人もいる」というメサジェの作品は、両義的であり、多様的であるといえます。
私見ですが、私はどうも…この展覧会から「何か大きなガツンとしたもの」を受け取ることが出来ませんでした…期待しすぎたせいでしょうか。なんというか、どっちつかずなんです。多様性の意味や、意味の含ませ方などもわかるのですが…いまいちダイレクトに伝わってこない。インスタレーションが、舞台装置のように感じられてしまうのです。それは、なぜか。
メサジュの名字「Messager」はフランス語で「メッセンジャー」「使者」という意味があるそうです。そこから今回の展覧会タイトル(英語)「The Messengers」がでてきたのだそうですが…。私は、作家はどこか客観的に自分の作品世界を見ているのではないかなと思いました。作品をつくっている自分と、それを伝えている自分。それぞれが存在していて、距離がある。だから、重いテーマや使っているメディア(ぬいぐるみとか)の割には、生々しくない。初期の作品で、自分の制作活動のために集めたコラージュ集(ネタ大集成?)の展示があるのですが、それは密閉された部屋に飾られ壁にあいた小窓から覗き込むようになっています。それは、作家自身も自分の芯の部分には、そんな小窓のようなものから覗き込むようにしか触れられないということの現れのようにも感じます。ソフィ・カルといい、フランス女性作家の傾向かもしれませんが…どこかクールで客観的です。そして、美しい。
ネガティブにも受け取られる私見を書いてしまいましたが、展覧会は見るべき魅力的な作品にあふれています。特に2005年にヴェネツィア・ビエンナーレに出品された「カジノ」は素晴らしかったです。本当に、多様な表現方法をもった作家ですし、見る人によって印象は違うと思います…百聞は一見にしかず。見るのも嫌って位、拒否反応がある方もいるかもしれません。大笑いしてしまう方もいるかもしれません(!?)押し付けがましい声高さはないのですが、一度見たら忘れない独特な世界観。メサジュの「メッセージ」は、手紙を書いて届いてから封をあけるまでの距離のような、近くて、遠いものなのかもしれません。
余談ですが、メサジェはクリスチャン・ボルタンスキーの奥さんでもあります。(初期の作品はちょっと似てる?)
作品の様子(You Tube)
http://jp.youtube.com/watch?...
http://jp.youtube.com/watch?...
http://jp.youtube.com/watch?...
「アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち」森美術館
2008年8月9日(土)~2008年11月3日(月・祝)会期中無休
http://www.mori.art.museum/contents/...
- 商品名: The Messagers: The Messengers
-
参考価格:
¥9,524 - Amazon 最安価格: ¥8,422
- 著者: Annette Messager
- 出版社: Prestel Pub
- 発売日: 2008-02-28
-
詳細をみる
- 2008/08/13更新
- 2008/08/13登録
- 1598クリック
「アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち / 森美術館」を検索
- メイン
- コメント(7)
- つながり(3)
- トラックバック(0)
コメント (7)
最新コメント5件
2008/08/19
はごたえ 鳥の死骸とか、人形の下着とか、そんなものについてフフフ、、、って会話してるイメージだよー!こわいー! 作風が似ているのは、結婚したからでは? 商業美術の世界でもけっこういますよ、そっくり作風夫婦。 マイクケリーたしかに。
プーク えー、結婚してから作風が似るなんてそんなの嫌だな…夫婦ユニットとかやってるなら別だけど。表現活動はそれぞれ自立してて欲しいような(私の理想では、だけど)。でも最近は夫婦共々活動してるのって多いよね(話がずれた)ボルタンスキーとメサージュはどこで出逢ったのかなあそもそも…戦中生まれは一緒の二人だけど、境遇が違うからなあ。作品イメージは怖いけど、二人の笑顔(ボルタンスキー&メサージュ)は素敵だよ。だから良い夫婦だ!(勝手な判断)
はごたえ 嫌だけど、影響は受けちゃいそう、一緒に食べて寝て息してるんだもん。B&Mは思ってたより若若しくてびっくり。とくにボルたんの肌のツヤっぷりったら…! しかし昨今、夫婦コラボ?みたいなの多いよね…なんだかなぁと思ってた。
2008/08/20
プーク 夫婦コラボは話題づくりっぽい感じみえみえだったら嫌だな…ほんと、なんだかなぁだよ。最初から夫婦で一組とか(例えが思いつかないけど…100%オレンジとか??)ならいいけど。。アーティストは、あくまで私の理想だけど、24時間アーティストであってほしい…。なんというか、「美」に人生をかける位の覚悟とか責任とか背負って、それと引き換えにアーティストであってほしいなって思ってしまう。本当に私の勝手な思い込みなんだけど。何かを捧げてしまっている人は、違うと思う。結婚してからダメになってしまうアーティストも少なくないしね。。でも、ちゃんと研ぎ澄まされたアーティスト同士は、素晴らしいパートナーシップを築くことができるってことなんだと思う。アーティストでなくても、ともかく夫婦は自立しつつ、かつ仲良しが一番だよね、きっと。(それにしてもKWの内容と全然関係ない話してるよね)
はごたえ 仰るとおり。関係ない話でごめん でも関連した話だから、きっとありだね。
- すべてのコメント »
つながりキーワード (3)
ベッティナ・ランス/聖書な写真集
- (Pokeel)
フランスの女性写真家ベッティナ・ランスによる、 聖書をモチーフにした写真集「I・N・R・I」。 聖書の一場面を、彼女ならではの視点で演出、撮影。 現代の聖書物語に仕上げて...
アール・ブリュット美術館
- (あおき)
スイスはローザンヌにある、アール・ブリュットの作品のみを展示する美術館。ジャン・デビュッフェが集めた数千点にもなる作品がローザンヌ市に寄贈されたことから、1976年に開設...
Sophie Calle/Exquisite pain
- (リボンシトロン)
フランス人のアーティストSophie Calle. 1984年10月25日に日本へアートの奨学金で来たんだけど、その3ヶ月の間にフランスで待っているはずの最愛の人が離れていってしまった。 彼...







アール・ブリュット美...
ベッティナ・ランス/...
女ー沼田識史作



