スケッチオブスペイン
ある日女性が、引退した闘牛士を訪れたときの話をしてくれた。その闘牛士は、今は闘牛用の牛を育てているってことだった。彼女が、アメリカの黒人ミュージシャンが作った「スケッチオブスペイン」のことを話すと、その闘牛士は「外国人であるアメリカ人、特に黒人が、そんなレコードを作るのは不可能だ。フラメンコやスペイン文化の知識が少ないからな」と言ったそうだ。ところが、彼女が彼の了解をとってからレコードをかけると、彼は静かに座って聴き入った。終わると、椅子から立ち上がり、久しぶりに闘牛士の服を着た。そして引退してから初めて、自分が飼っていた牛と闘い、殺してしまったという。で、彼女が、なぜそんなことをしたのかと聞くと、「音楽に感動して、戦わずにはいられなくなったからだ」と答えたそうだ。オレには、出来過ぎた話で信じられなかったが、彼女は誓って真実だと言っていたな。この話も、「スケッチオブスペイン」から生まれた伝説の一つだ。
マイルスデイビス自叙伝 378ページ 宝島社 中山康樹訳
Sketches of Spain
- 2008/09/06更新
- 2008/09/02登録
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