高円宮杯 全日本ユースサッカー選手権 (U-18)大会
9 月 7 日に第 19 回となる 2008 年大会が始まった日本サッカー協会(JFA)主催の U-18 世代の全国大会。大会名は、2002 年に逝去された日本サッカー協会名誉総裁、高円宮憲仁親王を記念してつけられています。
ちょっと前ならオーウェンやルーニー、最近ではメッシ、アグエロ、パト、ボージャン、ドス・サントスらに象徴されるように、ユース年代でありながら世代を飛び越えてトップ・レベルのリーグ / クラブ / 大会で活躍する「ワンダー・ボーイ」や「アンファン・テリブル」が増加する傾向が顕著な昨今の世界のサッカー界において、「将来を見据えた育成」という目的だけではなく「即戦力の発掘」という意味も持ち、以前よりもさらに重要視されるようになっている U-18 世代ですが、日本のこの年代のトップ・レベルが観れる大会がこの高円宮杯です。今大会のポスター(画像)には「日本サッカーの近未来が、ここにある。」と書かれていますが、個人的には「近未来」だけではなく「現在」もあると思っています(トップ・チームに合流しているこの世代の選手をこの大会に参加させるかは、それぞれのチームの考え方によりますが)。ここ数シーズンはなるべく観るようにしているんですが、近年の大会はとてもレベルが高く、この年代はすぐにプロ(= J リーグ)や U-20 ワールドカップ、そしてフル代表にも直結するという意味でもとても見応えのある大会です。
● 高円宮杯 第 19 回 全日本ユースサッカー選手権 (U-18)大会
JFA の定める大会の趣旨は「(財)日本サッカー協会は、日本サッカーの将来を担うユース(18 歳以下)の少年達のサッカー技術の向上と、健全な心身の育成を図ることを目的とし、第 2 種加盟チームの全てが参加できる大会として本大会を実施する。」となっているんですが、ポイントは「 2 種加盟チームの全てが参加できる」という部分(「第 2 種」というのは高校年代を指します)。つまり、それぞれ異なるカタチでこの年代のサッカーの中心的な役割を担っている高校のサッカー部と J リーグのクラブのユース・チームが両方が参加する(できる)、そして同じ条件の下で実力ナンバー 1 を競う大会だということです。
● 第 19 回の組み合わせと日程
大会は、出場資格を得た 24 チームが 4 チームずつ 6 グループに分かれて全後半 90 分(延長戦・PK 戦なし)の試合を総当たりで行う第 1 ラウンドのグループ・リーグを戦い、勝ち抜いた 16 チームが決勝トーナメント(延長戦・PK 戦あり)に進出するという方式。つまり、サッカー界では常識になっているスタンダードな方式で競われるということで、ここにも高円宮杯の特徴があります。
この年代のサッカーと言えば、日本の高校スポーツを代表する大会であり、冬の風物詩として人気の高い全国高等学校サッカー選手権大会、いわゆる「冬の選手権」に代表される高校サッカーが長く中心的な役割を担ってきているわけですが、近年、特に J リーグ発足前後から J リーグのクラブの下部育成組織、いわゆるクラブ・ユースの活動も活発になってきて、現在ではそのふたつの流れが、お互いに不足部分を補い合いながら併存している状態です。
高校サッカーの問題点のひとつに、サッカー部の規模があります。全国的に知られるような名門校には全国から選手が集まり、たくさんの部員数を抱え、2 軍・3 軍まであるような学校も少なくありません。当然、そういったチームでは試合に出場できるのはごく一部の選手のみになり、もっとも試合経験が必要な時期を球拾いやスタンドでの応援で費やしてしまわざるをえない生徒を数多く生み出してしまいます。もうひとつの問題として、「一発勝負」のトーナメント方式で大会が行われているため、数多くの試合を経験できるのは一部の強豪のみで、弱いチームになればなるほど試合経験が欠けるという悪循環を生んでいることがあります。また、トーナメント方式にはまず第一に勝利を優先する(せざるを得ない)という傾向もあり、毎年全国レベルで結果を残すことを半ば義務付けられているような強豪校は、プレーの質の向上や個々の選手の育成をある程度犠牲にしてでも目の前の試合に勝つこと求められるケースも多くなりがちです(多くの大会が短期集中で行われるために連戦が多く、質が維持しにくいことや、勝つことによってしか「強豪」としての環境を維持できないという側面もあります)。個々の技術や個性よりもチームプレーを、創造性豊かなプレーよりも泥臭いプレーを指向することで、手堅く結果を求めがちだという感は否めません。ただ、長年培ってきたノウハウはもちろん、問題点を認識しながら独自の育成法を模索する熱心で個性的な指導者(当然ですが「教育者」でもあるので)も多く、幅広く門戸が開かれ全国津々浦々に存在するという意味では、日本サッカーの育成には欠かせないことは疑う余地がありません。
一方のクラブ・ユースは、セレクションで選りすぐられた少数精鋭。言ってみれば、エリート集団です。しかも、目的はチーム力の向上よりも、個を磨き、ひとりでも多くトップ・チームに戦力を供給すること。身近にトップ・チームの練習を見たり、トップの選手と触れあうことができ、能力のある選手は高校卒業・プロ契約を待たずにトップ・チームの練習・試合に参加することができるため、現実的な目標として「プロ」を感じることのできる、プロに直結している環境なのです。J リーグ設立当初こそ多くの高校生がクラブ・ユースよりも高校を選ぶことが多かったですが、近年はクラブ・ユースもとても充実していて、ガンバ大阪やサンフレッチェ広島、柏レイソル、横浜 F・マリノスなど、ユース出身の選手が数多くトップ・チームでプレーしているチームも増えています。また、大会方式もリーグ戦を採用しているため、必ずしも全試合勝利する必要がないので大会をトータルで考えて戦うことができ、どんなチームでも最低限の試合数を経験できるのも特徴です。ただ、もちろん問題点もあります。少数精鋭であるが故に門戸がとても狭く、また、成長時期にバラつきがある育成年代の選手のポテンシャルをセレクションだけで見抜くのはとても難しく、結果として荒削りな選手よりも完成度の高い(早熟な)選手が多く、エリート集団だからか、技術はあるが泥臭さの欠ける「優等生」的なプレーヤーも多い気がします。
このように、どちらにもそれぞれの特徴と問題点を持っているわけですが、上手くそれぞれの問題点を補い合うような方向に進んでいるような気がします。ユース年代の世代別代表のほとんどをクラブ・ユース所属の選手が占める傾向が強くなっている一方で、例えば、中学生年代のジュニア・ユースではクラブ・チームに所属しながら、ユース年代に上がるためのセレクションで落選したために高校サッカーに進み、結果として日本を代表するプレーヤーになった中村俊輔や本田圭佑、藤本淳吾のようなケースもあり、選手にとっての選択肢を増やし、より柔軟で多様な環境をもたらしていると言えると思います。
以前は高校とクラブ・ユースの交流はあまりなかった(運営方針や管轄の違いだけでなく、レベルにも差があったので)んですが、クラブ・ユースが力をつけるにつれてお互いに交流の重要性を認識するようになり、徐々に交流の機会が増加してきました。そうした流れの中で、試行錯誤を繰り返しながらできたのが現在のこの高円宮杯(及びその地区予選も兼ねる JFA プリンスリーグ U-18)。当初は高校サッカーが上位を独占していましたが、近年はクラブ・ユースが高校を凌ぐようになり、現在はまた、高校が巻き返しはじめた感があり、どこが勝ってもおかしくない、とても面白い状態です。あと、案外見過ごされがちな重要なポイントとして、余裕を持った大会スケジュール(試合間に数日のインターバルが設けられている)と、全試合がトップと同じ 45 分ハーフで行われる点があります。連戦が増えるとプレーの質が低下するし、成長期の身体への影響の面でも弊害があるのは言わずもがなですが、40 分ハーフで行われる高校サッカーと違って 45 分ハーフで行うことで、「サッカーで最も危険な時間帯」と言われる各ハーフの最後の勝負所をこの年代からキチンと経験し、90 分という試合の時間をカラダに染み込ませることができることも大事なポイントです。これまでの慣行とメディア・広告代理店の強い関与の影響(その功績はもちろん認めますが)か、まだまだ「冬の選手権」と比べるとメディアの扱いや認知度が低い印象は否めませんが、クオリティは間違いなくナンバー 1。高い技術や若さ溢れるフレッシュなプレーだけでなく、グループ・リーグ全体を見越した戦い方など、サッカーの醍醐味を存分に味わえる、もっと注目されていい大会だと思います。
- 2008/09/08登録
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