アンダスタンディング・ユーエスエー
Understanding USA
「情報の視覚化」というテーマで取り上げられることの多いRichard Saul Wurman(ワーマン)が、アメリカに関するさまざまな事実を統計データを利用してまとめた一冊。多くの第一線のデザイナー(Wurman の言葉で言えば Information Architect)による統計情報を視覚的に理解させるためのダイアグラムの実験がたくさん詰め込まれています。タイトルのUnderStAndingの中にUSAの文字がひそませてあるところがポイント。
そこに呈示されたデータの1つに「20世紀の100年間に戦争で死亡した非戦闘員(つまり一般市民)数の国別統計」というのがあります。
●100万人以上
ドイツ、旧ソビエト、旧ユーゴスラビア、中国、アフガニスタン、ベトナム、スーダン、トルコ
●50万人-100万人
日本、カンボジア、インドネシア、インド、ルーマニア、スペイン、ルワンダ、ウガンダ、エチオピア、ブルンジ
●10万人-50万人
フランス、イギリス、ベルギー、オーストリア、ハンガリー、ギリシャ、コロンビア、イラン、イラク、クゥェート、フィリピン、レバノン
ほとんどが二度の大戦の舞台となった国、独立戦争や内乱が続いた国々ですが、おや?と思うのは、当のアメリカさんはどこにいるのか?ということです。(この本はWebでも公開されており、下のリンクからこの統計チャートのページを見ることができます。ページが表示されたら、右下のview full sizeをクリックすると細かいところまでよく見えます。)
よーく探したら、チャートの枠外、遠く離れたところに「United States, 1000人以下」と表記されているではありませんか。驚くなかれ、かの国は20世紀の100年間にわずか数百人の犠牲者を出しただけなのです。つまりアメリカの一般市民は、いつも紛争や戦争からいちばん遠いところにあったということがよくわかります。(意外にも、常に平和と中立を維持しつづけてきたスイスですら、5000人以上の犠牲者を出しています。)
そして2001年9月11日、アメリカは1日で3000人以上の市民の命を失いました。失われた命の数の大小だけでものごとを論じることはもちろん許されないけど、そのときこの統計のことを思い出したのです。あの事件の後、アメリカがとった子供じみた報復行動には賛否両論が起こりましたが、「そうか、こういう経験がずっとなかったので、びっくりしたんだ。気が動転して冷静になれないんだ。」とあらためて考えさせられたのです。幸いにも日本もこの半世紀以上、そういう経験から遠ざかっているわけですけども。
21世紀の100年はどうなるのか。まだ始まったばかりだけど、こういう統計が(いい意味で)無意味な100年になることを祈るばかりです。
Wurmanはこのあと2000年に「Information Anxiety 2」を出版し、その中にも同じチャートが再掲されて紹介されていますが、なぜかそこからはアメリカの数字は抜かれています。不思議です。(邦訳は『それは「情報」ではない。』金井哲夫訳、としてMdNから昨年出ています。)
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