魂の響きを伝える@小澤征爾
BSハイビジョンで「小沢征爾 魂の響きを伝える」を見た(2003.1.5放送の再放送)。
ウィーン国立歌劇場の音楽監督になった小澤征爾のボストン交響楽団との別れ(28年間の日々との別れ)や日本の田舎でのキャラバンコンサート(ロストロポーヴィチと小澤が田舎の寺の本堂で演奏するのだ)、信州松本でのサイトウ・キネン・オーケストラの活動を伝えたドキュメントである。
特に感動したのは、田舎の学校で小澤がコンサートを開いてそのお返しに生徒たちが合唱してくれるのを聴いているときの小澤の涙である。生徒たちの合唱を聴いてあの小澤が感激し、そのことを語る際にもまた涙しているのだ。
小澤は言う。「技術が下手でも感動させてくれる演奏がある。そのことを生徒たちの合唱は教えてくれる。音楽にはそういう力がある」と(ビデオを消してしまったので正確な言葉ではないかもしれないが、趣旨はそういうことだ)。
ああ、この人は豊かな感性を持っている人なのだと感じた。音楽を聴くときに我々はつい言葉に翻訳してしまい、演奏にレッテル(ロマンチックだとか巧緻な演奏だとか)を貼った上で耳に入れる。そうではなくて、言葉を介在させないで音楽に直接的に触れる聴き方(純粋経験「色を見、音を聞く刹那」=没我の状態、すなわち、対象を捉えてはいるが分析的思考が始まる前の状態)をしているのだと思う。
そしてまた、小澤は緻密な頭脳の人でもある。ボストンでの小澤の住まいの中の勉強部屋の模様が映されていたが、万巻の楽譜で埋め尽くされている。小澤はここで譜面を読み分析し暗譜して音楽を形作っていたのだ。
これに加えて広い視野と行動力。なにせ青年小澤はスクーターと体一つで世界に乗り出して行ったのだから。
かくして、人間力の根源は①豊かな感性、②緻密な頭脳、③広い視野と行動力であることを発見した。今さら発見しても遅いけれど、せめて豊かな感性だけはと願って今日も音楽を聴くことにしよう。
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