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――静かなる詩情

ヴィルヘルム・ハンマースホイ展

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何とも不思議な絵だ。謎かもしれない。限りなき静謐といえば、静かさが特色ともいえよう。だが、分からないことが多すぎ、展覧会場を出て後に尚、あれは何だったのだ、という思いが残る――そんな感じだ。12月7日まで。

「19世紀末デンマークを代表する画家ヴィルヘルム・ハンマースホイ(1864-1916)は、コペンハーゲン美術アカデミーで学んだ後、「自由展」と呼ばれる分離派に参加、アカデミーとは一線を画する活動によって生前にヨーロッパで高い評価を得ました。その名は、日本ではまだほとんど知られていませんが、北欧の象徴主義美術を代表する最も重要な作家のひとりです」と公式HPに紹介されているように、確かに、その画家の名前、作品を初めて知った 。

「17世紀オランダ絵画に強い影響を受けたハンマースホイの作風は、フェルメールを思わせる静謐で古典的な室内表現を特徴とし、自国のデンマークはもとより、ドイツやフランス、イタリアにおいても高い評価を得ていました。オランダ風の写実主義で表わされたハンマースホイの住居ストランゲーゼ30番地のアパートを舞台に、妻のイーダは顔を鑑賞者に向けることなく、その後姿が繰り返し描かれました 」と事前に読んで、フェルメールとの関連を頭に入れて見に出かけたが、HPで書かれていることは、実物を目にして初めてその内容が分かってきたが、事前には読んでも助けになるのだろうか、という感じがした。

「アカデミーとは一線を画する活動」の初めにあるのが、21歳の時、美術アカデミー春季展に出品した、妹のアナをモデルとした《若い女性の肖像、画家の妹アナ・ハンマースホイ》1885年。その後のハンマースホイの特長といえる一種の朦朧とした輪郭が容れられず、落選する。その当落を巡って論議が起きたと言うのも、分からなくはない。「反アカデミー」の出発でもある。

肖像がいくつかあるが、いずれも衝撃的であった。中でも後にはエリ筋や後姿ばかりで登場する妻イーダ。《イーダ・イルステズの肖像、のちの画家の妻》1890年で、初めて姿を見せた妻イーダの両目の色彩は異なって彩られ、やや斜視気味の目は、どこを見ているのか分からないが、どこか魅惑的である。若い。イーダの身体の中心線が、センターより左側に寄せられているのには何か意味があるのだろうか。そのイーダの正面からの肖像。《イーダ・ハンマースホイの肖像》1907年。38歳のイーダだといわれるが、もっと老けている。瞼の下に彩られた紫色、額に描かれた血管、握られた手指。これが実像なのだとすれば、愛する妻を「ここまで描くか」と言う感じだ。この他に《3人の若い女性》1895年、《ふたりの人物像(画家とその妻)、あるいは二重肖像画》1898年に相貌の分かるイーダが登場する。

「図版で見るよりもかなり良い。写真では再現しきれないほど画肌が繊細」「手が非常に良く描けている」と評価する人のブログに出会った。確かに、手がしっかりと描かれている。また、この人は「作品制作に写真を使って描いているものもある」としている。確かに、部屋の中の画像には、上からの目線で描いた部分と床面に沿った低い視線を一つの絵としているものもある。また「ハンマースホイの作品は簡単に説明するならば具象画です。しかしよく作品を分析していくと、空間的におかしいところが結構あります。キャプションを丁寧に見ていくとそのことに触れてくれているのですが。たとえばピアノの足は普通4本ありますが壁側の足を描いていなかったり、と構図上描いたらヘンになりそうだと思ったところは実際とは異なるように扱っています」との指摘もある。

ハンマースホイの絵の不思議さには、もちろん計算されているのだろうが、そんなヘンなことが多く、ついつい子供の頃に楽しんだ「隠し絵」を思い出す。描かれている絵の後ろに、もう一つ画家が密かに描いている絵があるのではないか、と思わせる感じなのだ。
画家夫婦が住み、描き続けた「ストランゲーゼ30番」の部屋のことについては、他の評論が多く触れているので、次の機会に譲る。風景の中で《ゲントフテ湖、天気雨》1903年の湖面に映える白い光が印象的で、ほっとする1点だった。

同じ天覧会について、以下のような紹介があるらしい。いまはゆったりした会場だが、これで、また混んできそう。NHKの陰謀のような気さえしてくる。

新日曜美術館(NHK教育)で11月16日(日)朝9時〜10時 夜8時〜9時(再放送)に
タイトル: 誰もいない部屋こそ美しい   ゲスト: 小栗康平さん(映画監督)佐藤直樹(国立西洋美術館主任研究員)

迷宮美術館」"サイコロジカル・ミステリー 〜アートで読み解く人間心理〜" 放送日時: BS-HI 11月17日(月) 午後7:00〜7:45 BS-HI 11月25日(火)再放送12:00〜12:45
総合 12月14日(日)再放送14:15〜15:00

ヴィルヘルム・ハンマースホイ展

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chagale
  • 2008/11/16更新
  • 2008/11/16登録
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