アダルトビデオ10年史
世の中が急速に不景気になると、人は“悪い意味でも”流行過敏症に陥りやすくなります。世間の目、知名度、客観的評価にばかり存在意義を見出そうとする愚にハマる人が増えるのです。
なかんずく、滅私的風潮が蔓延し、人気ランキングの崇拝、相互監視の気運、魔女狩り、疎外感に苛まれる人が増加します。自殺、ノイローゼ、自暴自棄な犯罪者の予備軍も蓄積されるのです。良いことではありません。
かつてのバブルのことを悪く言う人は多いですが、「マネーゲームに現(うつつ)を抜かす輩」もハビコる一方で、市民の多くに精神的なゆとりが増し、「生きる尺度や人生観に彩り豊かな拡がり」をみた、という意味では、あの放蕩時代をプラスに評価もできる……わたしなんかは、そう思います。
で、今から18年近く前 ── どんなマイナーな関心事も深く掘り下げる趣向が愛され、いわゆる「オタク的なる精神傾向」の萌芽が芽吹いた時代。バブルが頂点の1991年初春に刊行されたのが、この《アダルトビデオ10年史》でした。
日本最初のアダルトビデオは、日本ビデオ映像が制作した『竹村祐佳/ビニ本の女 秘奥覗き』 他の2作品(1981年5月発売)と言われています。本著は、そこから1990年までの10年間をざっと俯瞰しつつ振り返った、AV情報誌記者らによる「オレたちの業界、こんなことありましたねェ」な内容の、“われらの記録・永久保存版”なのでございます。
最後(の'90年の項)は「過激美少女」の登場、と銘打って樹まり子、松阪季美子、林由美香らの活躍を描くところで終わっています。
ちなみに、飯島愛さんらが登場してくるのは'91年以降であり、この“栄光の”10年史には載ってきません。もとより、飯島さんに関して言えば『Tバックの女王』(!?)などと“表舞台”に担ぎ出された時点で、(正しくは)アダルトビデオ業界に属する存在ではなくなっています。「全うなAV女優」とは、下履きも付けない真っ裸に精魂を注ぎ続けた“聖女”らを指し、その究極の理想形を、(34歳の若さで夭折した)林由美香さんの生涯に観ることができるのです。
身体ではなく、自著やトークで“心を裸に”して(AVファン層よりはるかに)多くの人から愛され、それゆえ多くの哀しみを誘った飯島愛さんの急死ですが、こと「職業人たるAV女優としての彼女」に限れば、その早すぎた死を惜しむ男性は皆無に近かろうと思います。
アダルト・ビジュアル界の中に“だけ”生きる、とは、それほどに残酷。血のにじむ厳しい戒律と切磋、修練を女優さんに課してゆくものだから(※あくまで妄想、イメージとして)です。その被虐なありように、“ある種、単純な”オトコは欲情し、骨ならぬ陰茎の髄から惚れこむのでありましょう。この本をあらためて眺め返すとき、そんな感慨(もしくは空虚感)がこみ上げてくるわたしなのでした…。
関連リンク↓ 『女優・林由美香』硬式BLOG
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