絵画通信教育と広告イラスト
大正のカルチャービジネス
明治から大正へ、ことに日露戦争後、各種通信教育が盛んになったようだ。本書は大きく分けて2部構成になっており、前半は、田口鏡次郎が興した日本美術学院と中央美術社での活動を通じて、絵画通 信教育の経過をたどる。 教本の講義を書いた画家の顔ぶれなど興味深い。
後半では、考案した化粧液で化粧品業界の寵児となった堀越嘉太郎と広告についての詳察。さらに、「女流洋画家」渡辺文子のレート化粧品広告図も紹介、という形だ。「いずれも、大正期を共有した創業者・開拓者をめぐる論考」と出版社の紹介にあるが、全体を通じた内容と、書名になにかミスマッチを感じる。面白そうではあるが、後半部の堀越嘉太郎、渡辺文子の部分は未読。
全体に、この筆者は何で、このような筋立てで本を著そうと考えたのだろう、と考えさせられた。及川益夫という人の本だ。奥付の著者略歴を見ると「1945年 東京生 1968年 大学(経済)卒業 金融機関勤務。主にシステム開発担当 退職後、戦前の美術を個人研究。川崎市在住」とだけある。皓星社。3500円。
実に淡々、分からない部分については「分からない」と保留する、研究者としては誠実だし、禁欲的な表現に終始しているように見える。長年にわたって通信教育の教本などを蒐集した成果だと思うが、だから何、と思わなくもない。それでも「スケッチ倶楽部と龍子川端昇太郎」の章あたりでは、通信教育の事業とともに、龍子はじめ鶴田吾郎、小林古径などが大森在住の画家たちと展覧会を開くに至った経緯などは興味深い話であった。大森駅近くの高台にあった望翠楼ホテルを会場としていたことから、その地名をとって会の名前が「木原会」であったことも。
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