山本直樹『レッド』
90年代後半に『ありがとう』でバブル崩壊とともに崩れ散った家族を描き,00年代に『ビリーバーズ』で閉鎖された人間集団に芽生える狂気を描いたエロ漫画家・山本直樹.その彼がいま描いているのが.安田講堂陥落から浅間山荘事件にいたる左翼運動に青春を投じた若者たちの群像劇『レッド』だ.
すごく過激でセンセーショナルなものを想像するかもしれないけれど,描かれているのはフツーの若者のフツーの日々.仲良くやったり,つきあったり.セックスしたり,分かれたり.揉めて仲違いしては,仲なおりする.それは,テニスやバンドのサークルの日常と何ら変わりのないもので,ちがうのは「革命とか言って国家を変える」という目的で連帯していることぐらい….
でも,その目的もけっきょくは,当時の流行りだったり青春を過ごし方だったりしたんだろう.
そんな観点で1969年以後の左翼運動を描いた人は山本直樹がはじめてだと思う.
ヒロイックに過去を美化するか,いまだにイデオロギーに塗り固められているか,それとも狂気の沙汰といって異常性を主張するか…学生運動に身を投じた側もそれを抑圧した側も,その程度にしか語れない.かんたんに脈絡をつけ説明したがるせいで,だれもそこで起きていたことを描ききってはいない.
山本直樹は,出来事に対するいっさいの評価を避けて,若者たちのフツーの青春を描く.
でもその日常で,若者たちの何人かが殺され,そして殺す.凶行に走らざるをえなくなるフツーの日常とは何かーフツーの日常をとおして,そんな人間の性を描きたいのかもしれないと思った.山本直樹にとってはエロも,そういうものなのかもしれない.
意外にも,というほど意外ではないが…,『レッド』がキーワードになっていない.だから登録というわけではなくて,ほんとにオススメなのでキーワードにしてみた.このエロ漫画家はやっぱり凄い!
- 商品名: レッド 1 (1) (イブニングKCDX)
- 価格: ¥1,000
- 著者: 山本 直樹
- 出版社: 講談社
- 発売日: 2007-09-21
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- 2009/02/25更新
- 2009/02/25登録
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