ボタニカルライフ
ボタニカルライフ
これは、なんとなく是非、
暗唱したい掟である。
==
とりあえず十の掟
1:いい加減に愛したい
2:枯れるのは置場所のせいだと信じるべし
3:隣のベランダに土を掃き出すなかれ
4:捨てられていたら拾え
5:食後は植えられる種を探すべし
6:水さえやっときゃなんとかなる
7:隙間家具より隙間鉢
8:観察力で独断せよ
9:ばあさんが情報源
10:狭さは知恵の泉なり
ベランダーという
言葉の定義。
==
庭のない都会暮らしを選び、
ベランダで植物生活を
楽しんでいるのだ。
-中略-
しかし、これからは安心である。
皆さんも胸を張ってベランダーと名乗っていただきたい。
名乗った途端に不思議と気持ちが張り切り、
むしろ庭など金輪際持ちたくないというような
無理な気概に満ちてくる。
こんな狭い部屋に住んでいる私はなんと哀れであることよとか、
しょせん仮住まいですからねなどといった消極的な部分は
すぐに吹き飛ぶ。人生何事も肯定が必要だ。
自己欺瞞とも言う。
-中略-
ただ、違うのは心がけである。自分はどうもいけない。
ひどく冷えると窓を開けるのも億劫になり、
それで一日世話が遅れたりする。完全に枯れている植物を
見てもなかなか事実を認めようとせず、葬るのを
1ヶ月以上伸ばしていたりもする。肥料のやり方は雑である。
底に抜けるまで水をやらないこともしばしばだ。
かよわい花を西日に当てて悠然と煙草など吸っていることもある。
植物からしてみれば、俺は愛の足りない人間に違いない。
しかし、それでも俺は十分必死なのだ。
しおれた茎には心を痛め、表土を覆ったカビを見ればガクゼンとする。
その時、俺はかつてないほど俺以外の生命を愛しているのである。
人格の不完全さを植物に見守ってらっている。
ひょっとすると、それがベランダーという言葉の
真の意味合いなのかもしれない。
(p11より引用)
ボタニカル・ライフ―植物生活 (新潮文庫) いとうせいこう著
- 2009/10/11登録
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