トランズ・アム / レッド・ライン
Trans Am / Red Line
ワシントンDC出身のハード・インスト・トリオ。革新レーベル、スリル・ジョッキーからリリースされたトランズ・アムの5thアルバム。音楽へヴィー・リスナーとしての観点から作りこまれたキテレツ・サウンドは、ある種現代に生まれたミクスチャーなのだが、個性溢れる作風を持っており、真似の出来ない無二の才能を発揮し続けている。
ハード・ロックとテクノ。こんな相反する2つのジャンル・サウンドがトランズ・アムのベースとなっている。80年代に席巻した音楽の中でも、極端に好みが分かれて当然のはずのこの2つ。だが、異質中の異質で、そのどちらに対しても踊り狂っていた若者集団がいた。セバスチャン・トンプソン (ds&pro) ネーザン・ミーンズ (b&key) フィリップ・マンレイ (g&key)は中学からの知り合いで、大学時代にトランズ・アム(名前の由来は某車名から引用しているとのこと)を結成。クラフトワークとハード・ロックをこよなく愛している彼らは、そのどちらも自らの音楽へと封入し、摩訶不思議な分裂サウンドを奏ではじめた。活動後、すぐにその才能を見出したのは、あのジョン・マッケンタイア。96年にスリル・ジョッキーと契約を結ばせ、彼らをデビューさせた。デビュー作『トランズ・アム』(96)から『サレンダー・トゥ・ザ・ナイト』(97)『ザ・サヴェイランス』(98)『フューチャーワールド』(99)へとアメリカのリリース・サイクルをまるっきり無視した恐るべきペースで、彼らはアルバムを発表。そして00年には今回紹介の『レッド・ライン』をまたしても前作から早々1年で完成させている。
『レッド・ライン』は元々彼らの売りであった、2つの音楽の融合を超えた(というか忘れてしまった?)完全トランス状態のアルバムだ。もちらん、前作までのへヴィー・メタル・リフも鳴り響いてはいるのだが、インドネシアのガムランやネオ・サイケ・サウンドを取り入れ、リスナーを幻覚に陥れるようなヴォーカル曲も多数披露している。洗礼されたデジタルサウンドの中にアナログの鳴きのギターを鳴り響かせ、エフェクトをかけまくったヴォーカルはクラフトワークのようにレトロ・テクノを演出。ファンクビートまで刻みだした頃には、気が遠くなるほど耳が喜びを示し、彼らの生み出す、キテレツ・ミュージックに賛同の意を表明してしまうのだ。
僕もそうなのだが、ジャンルを関係なく聴く音楽ジャンキーが近頃増えている。恐らくだが、彼らもまたへヴィーな音楽ジャンキーであることに他ならず、片っ端から音楽を聴きまくり、自らの琴線に触れてしまえばすぐに取り入れるのだろう。そう特に、音楽ジャンキー泣かせの部分ばかりを抽出してを作っているからコア・ファンがどんどん拡大しているのだ。テクノのツボ、メタルのツボ、ファンクのツボ、ロックのツボ、全く持っておいしいところばかりを混ぜたのだが、彼らのひょうきんさがしっかりと音に残っているのもトランズ・アムがその存在を示せている証拠だといえる。
最新作『T.A』はこれまでの1年ペースを破って(これはこれで肩透かしを喰らった)出来た、なんと全曲ヴォーカル入りのアルバム。どうやらインスト・バンドだったことも彼らは既に忘れてしまったようだ。。
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