Ry Cooder / Chicken Skin Music
76年作品。何百万枚売れたレコードではなくても素晴らしい音楽は至るところに存在していて、ライ・クーダ-の発表してきた音楽なんて、その最たるものなんじゃないかな、とふと思う。一般的に知られている彼の名盤は『パラダイス・アンド・ランチ』とこの『チキン・スキン・ミュージック』だが、まろやかな印象を与える後者の方が僕はなんとなく好きで、何度となくプレイヤーに載せている。アメリカの伝統的音楽を当時できうるテクノロジーで挑戦してきたライ・クーダ-は、このアルバムでハワイのスラック・キー・ギターを導入。ゆったりした音楽をしっかりと聴かせてくれ、音の響きをただただ楽しませてくれる。
46年生まれのライ・クーダ-は16歳でブルース・ギタリストとしてデビュー。セッション・ミュージシャンとして名を馳せ、70年からソロ活動をスタートした。87年以来ソロアルバムの発表はなくなったが、ロサンゼルスの映画音楽やスタジオ・セッションで活躍し、95年にはキューバに渡って地元のミュージシャンと共演、彼らの名を世界に轟かせた『ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ』を発表した。これは日本のみならず世界中でヒットし、楽しい演奏をするライ・クーダ-を確認することができる。
ともかく彼のソロ作品は実に気ままで優雅だ。カントリー、ゴスペル、R&B、ブルース、レゲエ、テックス・メックス、ハワイアンと『チキン・スキン・ミュージック』1つのアルバムでもこれだけの音楽を消化しきっている。カヴァーの選曲も痛快で、カントリー色の強い"He'll Have To Go"(#04)をジム・リーヴスのヴァージョンよりボレロ調に仕上げ、ジョン・レノンもカヴァーした"Stand By Me"(#06)ではゴスペル調にテックス・メックス・アレンジを披露。最終曲の"Goodnight Irene"(#09)でのスラック・キー・ギターの調べは海岸を歩く姿を想像してしまうほど、雄大な風景とマッチする。本当に聴き終わった後の爽快感がたまらない。
衝撃を受けることはなかったが、影響を受けたミュージシャンは数多くいることだろう。例えば、同じ年にデヴィッド・ボウイは『ステイション・トゥ・ステイション』をレッド・ツェッペリンは『プレゼンス』を発表し、皆が衝撃を受けたはず。それでも、76年の名盤の10枚は?と聞かれるとライ・クーダ-をついつい上げてしまうようだ。今回世界中のサイトを検索したのだが、そのどこにもこのアルバムが何気にランクインしていたのがその証拠だろう。
音楽のベクトルは様々だからこそ全く愉快なものなのだ。彼の音楽に魅了された人はそのことに気がつき、益々音楽の素晴らしさを感じ入ってしまうはずだろう。









