Montagne Sainte-Victoire
サント・ヴィクトワール山
サント・ヴィクトワール山は南仏ブーシュ・デュ・ローヌ県と隣接するヴァール県にかけ、18kmにわたって連なる丘陵だ。最も高いところで1011m。ごつごつとしたライムストーンの山肌は、手前に広がるプロヴァンスの緑あふれる風景とは好対照を見せる。
セザンヌがこの山を最初に描いたのは1870年、『サント・ヴィクトワール山と切り通し』だとされている。彼はこのとき31歳。だが、晩年の10年間だけでも100点以上の作品に描いたという、最も愛されたモチーフのひとつはここではまだ構図の中心にすらない。
日記にも書いたように、ブーシュ・デュ・ローヌ県の県都エクサン・プロヴァンス(以下エクス)に生まれたセザンヌが、ずっと目にしてきたこの山を画題として意識したのは30代も後半になってから。たまたま列車の窓から見たときのことだった。
パリ生まれ、エクス育ちの作家ゾラとは幼いころからの親友で、のちに “絶交” 。1902年、ゾラがドレフュス事件の渦中で突然死去したのと前後して描かれた『レ・ローヴから見たサント・ヴィクトワール山』には、どうしても彼のこのときの心情が重なる。生来の気難しさから友人と呼べる人間をほとんど持たなかった彼ゆえに、ゾラの死はとり返しがつかない。
セザンヌが最晩年に好んだレ・ローヴからのアングルは、“セザンヌ通り” にある彼のアトリエからさらに10分ほど登った左手の丘の上。作品のパネルなども展示され、美しく整備されている。ふり返ると、のちのキュビスムを用意した代表作に描かれているサント・ヴィクトワール山が、そこにそのまま現れる。
- 2009/06/14更新
- 2009/06/14登録
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