忌野清志郎1951-2009
1050円は高い。
チャボと坂本龍一のインタビュー、渋谷陽一と山崎洋一郎の前書き・後書き、有名人の追悼コメント、年表以外はすべて既発の記事、既発の写真のアウトテイク。しかもここでの渋谷と山崎の文章には(清志郎逝去直後ということもあり当然ながら)いつもの熱さを伝える気力がない。発行の素早さが売りの一つだったとはいえ、少なくとも価格設定には工夫もメッセージもない。
ただし、これは素晴らしい刊行物である。何よりも清志郎のほぼ全仕事が本人によって語られている。忌野清志郎は周知のとおり説明を嫌う人だ。そして同時に説明不足も嫌う人だ。詩的な含みを持たせることは大好きだったが、神秘的な誤解は嫌った。渋谷は清志郎のその辺りの微妙な気分をうまく掴まえていたと思う。おそらく清志郎が自身のキャリアを語ったテクストとしては決定版になるのではないか。
新録のインタビューも素晴らしい。チャボは期待にたがわずエモーショナルだ。坂本も期待にたがわず清志郎の、未評価のままの音楽性の高さについて(おそらく沈着な面持ちで)解説している。どちらもそれぞれの悼みの表現があって、読んでよかったと思わせる。
写真も素晴らしい。中でもミックジャガーとのツーショットは清志郎の魅力を能弁に伝えている。肩を組んでミックを指差す清志郎。「おい、こぞう。見てみなよ。これがミックジャガーだぜ」。ミックが蝋人形に見えるのだ。彼にかかると、僕と清志郎以外の人間は一瞬にして蝋人形になって動かなくなる。世界に二人ぼっちになってしまうのだ。そんな状態でいつも秘密の話や、悩みや不満を打ち明けてくれた清志郎。僕のケツを叩いたり、蔑んだりしてくれた清志郎。
決しておセンチな追悼本ではない。きちんと彼の死を悼む本だ。僕とは何の関係もない実生活を生きたロックスターの軌跡を描いた書物である。しかし、何ともいとおしい気持ちにさせる。
- 商品名: 忌野清志郎1951-2009
- 価格: ¥1,050
- 出版社: ロッキング オン
- 発売日: 2009-06
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