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どうしてボクには仕事がないんだろう

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 関心空間にも過去何年間か参加されて個性的なKWの数々を披露しておられた、薫さんの本。
 本の表紙は、妙に手持ち無沙汰というか頼り無げな表情の、一見中学生にも見えるような男の人が、裸足でブランコに乗っているイラスト。裏を返すと、葉っぱが一枚もない木の枝らしきものに、横にしたサンドバックに目鼻を書き込んだような、一見ナマケモノにも見えるアヤしい生き物がぶらさがっている。

 内容は、派遣の仕事のストレスから鬱になり、会社を辞めるしかなくなったいきさつからはじまる。
 病気と薬の影響で変調をきたす身体と心。両親の離婚でバラバラになった家族の、不毛で噛み合わない親子の会話。失業してふりかかってきた生活苦と孤独……。
 こう書いていくと、どんだけ救いようのない暗い内容だろうか? などと想像されてしまいそうだが、そうではない。私など、泣きながら何度も吹き出してしまったほどだ。いや、笑いながら思わず泣いてしまったというべきか?(笑)
 著者が直面した現実はかなり深刻なものなのだが、深刻さ以上に、何かが妙に爽やかというか、軽快で明るいのである。
 現実社会でうまく立ち回るには、ナイーブさというのは往々にして邪魔になる。柔らかな心をそのまま抱えて、社会という場に出て行くのはいくつになっても怖いものだ。特に仕事の場では「もっと頑張らなくちゃ」と思ってみても、お客や同僚のちょっとしたひと言や周囲の無関心に気持ちが完全に萎縮してしまう日だってある。
 多くの大人達は自分の生活を守り、日々を大過なく過ごすために、弱い心をなるべく感じないようにしたり、自分のことを強いと思い込んだり、世間一般の基準で他と同じであることや少しだけ勝っている事にささやかな安心を感じたり、臨機応変に取り外しできる複数の仮面を常用してバランスをとっているのかもしれない。
 太宰治は〈大人とは、裏切られた青年の姿である〉と 「津軽」に書いているが、大人になるということは社会に適応するために、自分で感じる自由を失い、自分で自分を裏切っていくことなのかもしれない。
 この著者は、社会的な器用さや臨機応変さとかとは無縁の人のように思える。失業、病気、生活苦、孤独といった心がすり減ってしまうような現実の中で、ますます陥っていく負のスパイラル。はっきり言ってどん臭い。不器用だ。でも、ナイーブな優しさに裏打ちされた不器用さが、なんともいえずチャーミングに思え、読みすすめていくと、こちらの気持ちがどんどん温かくなってくるような気がする。
 著者は、その時々のどうしようもない現実と自分の気持ちに真正直に向き合いながら、キラキラ光る言葉に変えていく。現実がどうしようもなければないほど、伸びやかな感受力で、とてつもない妄想力を発揮できる希有な才能の持ち主のようである。それが読んでいて明るさ楽しさを感じる理由らしい。
 もちろんその妄想が、私の感性とぴったりマッチしているということを言いたいわけではない。著者(男)独特の自意識過剰と思い込みで、ある意味かなり屈折した視点から覗き見る妄想風景は、うんこ、おっぱいがよく出てくるし、この世界の言いようのない不気味さや危険、孤立感、異性に対する熱く息づく妄想フェロモン(?)まで満載していて、その感覚を半ばイタコのように共有しながら読みすすめていくと、人間がひとり生きていくということは、それだけですごい非常事態というかイベントというか、奇跡的なことなんだなと、わくわくしながら改めて感心している自分がいたりする。結局、私はなにが言いたいか自分でもよくわからないのだが、著者にとって書くという作業は、無味乾燥で平坦な世界を彩りに満ちた世界に変え、自分を肯定的に生きるための呪文なのだと思った。と同時に、この呪文はもしかして私にも効きそう…と思ったのである。
 薫さんには、丸出しのナィーブさと希有な妄想力(文才)で、今後もどんどん自分の人生と読者たちに揺さぶりをかけ続けてほしい。

http://www.amazon.co.jp/dp/...

 ところで、この本を読んでから、私は『どうしてボクには仕事がないんだろう』のドラマ化を夢想してしまうようになった。
 主人公・薫は、色白で内向的な雰囲気の、三十代の独身男性。薫役には、ちょっとさびし気でちょっと怪し気な風情がミックスした美形の俳優がいいと思う。そして、このドラマはシリアスではなく、コメディー仕立てにしたほうが人気が出るように思われる。両親役はとびきり個性的な役者がいいだろう。口やかましい母親役は市原悦子さん、宗教に走って家庭を崩壊させる父親役はイッセー尾形さんに前髪を振り乱してぜひやっていただきたい。というか、二人にがんがんと責められまくってしょぼんとうなだれる、どMな主人公の姿が見てみたい。(笑)そして、私もスーパーの買い物客とか近所のおばさん役とかなるべく目立たない傍役で出てみたい。エプロンなんかして……。
 オーディションの日程は追っておしらせ致します。
 出演希望の方、今から原作をしっかりと読んでおくように……(笑)

 出版から3年立ちますが、ドラマ化は、まだのようですが、
 薫さんの文章をこんなところで見ました。
 
 http://anews.jp/a/1162

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premgeetu
  • 2012/06/01更新 renew
  • 2009/07/09登録
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コメント (7)

最新コメント5件

2009/07/09

premgeetu eri さん、コメントありがとうございます。eri さんも妄想家なんですね。実は私もなんです(笑)テレビドラマ化したら、どんな役で出たいか、考えておいてくださいね。

2009/09/22

tomorrow bee 堺まさとさんなんて、どうでしょうか?年齢上すぎか? 「柔らかで、ナイーブな感性が求められる仕事」が、人間がその手を使って何かを作り出す仕事が 減ってきてるからではないかなと、最近いろいろ考えてます。 なんでも簡単に楽にと追い求めて、工場は機械に占領されて、気がつくと求人広告には、サービス業ばかり。 企業は儲ける事も大事ですが、社会に貢献という意味でも、人をあえて雇う努力をして欲しいです。

premgeetu tomorrow beeさん。こんにちは。堺まさとさん、いいですねぇ。あの人好きです。(笑)私はこの本を読んだ時から、薫さん役は萩原聖人さん的な人をイメージしていました。(この人もそろそろ40歳です)古いですが『 教祖誕生』が印象的で、現在も癖(カゲのある?)のある脇役で時々テレビで見かけます。

2009/09/23

tomorrow bee 萩原聖人さん、そう言われれば雰囲気あるかも。堺さんは綺麗すぎる(だだだ 大好きなんです)かも。萩原さんも、もうすぐ40なんですか。 でも、いつまでも幼い感じがするし、繊細な感じがするから、ぴったりかも。

premgeetu この本が読まれた数だけ読者の想像上の「薫さん」が生まれているわけで、そのイメージには幅があるでしょうね。いろんな意見が聞きたいです。

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