スタイル・カウンシル / アワ・フェイヴァリット・ショップ
Style Council / OurFavourite Shop
85年作品。スタイル・カウンシルは当時人気絶頂期であったザ・ジャムを解散させたポール・ウェラーが、デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズのキーボード奏者だったミック・タルボットとジャム解散直後の83年3月に結成したユニットで、混乱の80年代と共に過ごし、90年に解散をしている。今回ご紹介の『アワ・フェイヴァリット・ショップ』は1stアルバム『カフェ・ブリュ』と共に彼らの生み出した傑作として皆に知られている。どちらも甲乙つけがたい名盤なのだが、個人的な思い入れが強いという理由で今回はこちらのアルバムを選ばせてもらった。
「現代のモータウン・サウンドを作りたい!」記者会見でポール・ウェラーは高らかにこう宣言した。『ザ・ギフト』で見せたR&Bやファンク、ソウルへのアプローチはバンドの限界を感じさせ、遂に彼をジャム解散へと導いたのだ。83年の3月に発表されたデビュー・シングル"Speak Like A Child"は、リスナーに違和感を感じさせたが、それ以上にこのユニットへの希望を抱かせるサウンドに仕上がっていた。さらに、シングルを立て続けに発表後、アルバムへの肩透かしのようにミニ・アルバム『イントロデューシング』をリリース、この頃には、D.C.リー(vo) とビル・ブラッフォードの弟子だった若干17歳のドラマー、スティーヴ・ホワイトがほぼパーマネントなメンバーとなる。4人体制によるライヴと、この後もシングル発表を続け、彼らは話題を振り撒きまくった。12chのシングル・レコードがオシャレな感覚を植え付けだした頃で、彼らは敏感にそのブームにも反応を示し、次々と洒落たシングルを出してはチャートに食い込ませたのだ。
待ちに待ったアルバム『カフェ・ブリュ』は雑多な雰囲気を醸し出した、正にカオスなアルバムだった。ソウル、ファンク、ジャズはたまたラッピングと黒人音楽を下敷きにしたオシャレな味付け、サウンド・トラックと見紛うほどのヴァラエティーに何度もリスナーはプレイヤーに乗せるせることを余儀なくされた。刺激されたのはリスナーばかりではない。ジャズの新たなアプローチだ!と当時のジャーナリストは書きたて、アルバムはロングランのセールスを記録。彼らはいきなりの大成功を収めたのだった。
『アワ・フェイヴァリット・ショップ』は84年のツアー後、じっくりと制作されたアルバムで、カフェに流れる音楽のように同じミュージシャンが同じアルバム内でやったとは思えないほど、様々な音楽を鳴り響かせた。ソウル、ファンク、ジャズ、ヴォサノバからシャンソンまで、もはやこれがスタイル・カウンシルなのだということをゆったりと擦り込ませるかのように、演奏は鳴り止まなかった。様々な風景が僕を襲い、公園や空港、地下鉄、街のイルミネーションがフィードバック現象のようにやってきたのだ。当時の僕はまだほんの子供だったが、この音楽はカッコいいということは素直にわかった。TVで見たような光景が全てこの音楽には詰まっている、そんな気がしたのだ。半年間じわじわと売れつづけ、チャート1位を獲得したのも、彼らの地道なライヴと体験者の口コミ効果が大きかったのだと思う。
数年後(といっても中学生)の僕はこの音楽のルーツは一体?と黒人音楽に走ってみたが、彼らに味わった感覚はやっては来なかった。そして解散後、ソロ活動をスタートさせたポール・ウェラーが語った「あれはフェイク・ミュージックさ」という言葉が、やけに印象的で、スタイル・カウンシルはやっぱり、スタイル・カウンシルというジャンルなのだということがやっと理解できたのだ。つまり、彼らは音楽の持つスタイリッシュさを上手く醸し出すことの天才で、政治的なメッセージでさえもオシャレに感じさせた。そのマジックがこのアルバムにはたくさん詰まっていて、当時の僕でさえ、映像が流れるようなイマジネーションが沸き立ったのだ。
だが、この後のスタイル・カウンシルはどんどんと袋小路になり、堅実なサウンドに”逃げる”ような行動に走ったような印象がある。うわべをなぞらえることが上手すぎただけに、彼らは極端な批判を受けることは無かったが、リスナーが拡張性のなくなったスタイル・カウンシルから離れていくのは当然だったと言える。それが証拠に3rd『コスト・オブ・ラヴィング』に僕は風景を見ることが出来なかったわけで、結局、初期の2枚ばかりを聞いてしまい、”うわべ”のスタイル・カウンシル・マニアになってしまったのだ。それは他リスナーも同じだったようで、この後人気は急速に下降線を辿る。
バンドの絶頂期というのはそれほど長くはない。ポール・ウェラーが3度頂点に立てたのは全くその成り立ちを変え、成長を遂げたからであろう。僕の中のスタイル・カウンシルは2枚のアルバムで終わってしまったが、その後の彼らの活動がなければ今のポール・ウェラーは存在できなかった。人生に無駄なことなんてない、とはよく言ったものである。
- 価格: 1942円
- メーカー: ユニヴァーサル・インターナショナル
- 年(代): 1985年
- 団体名: スタイル・カウンシル
- 2002/10/02更新
- 2002/10/02登録
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コメント (6)
最新コメント5件
2002/10/03
fuji-yan. 面白いですね、ポール・ウェラー。ザ・ジャム、スタカン、ソロと逡巡しながらもそれぞれ評価されてますからね。その時の嗜好に常に正直でありたいんですかね。マジメなのか不器用なのか。。。
less 感想ありがとうございます。そうですね、初めて聴いた時はなんやねん、これって感じでした(笑い)でも、自分なりの世界観がどんどん膨らんでいく、そんなユニットだったと思います。ポール・ウェラーがマジメなのか、不器用なのか…、うーむ。素晴らしいミュージシャンで愛すべき男なのは間違いないですね。あと頑固な気もします(笑い)
2002/11/10
蜀犬 最近、又候CMに使われてますよねー。お洒落すぎる音が耳に残ってましたが、最近歌詞カードを読んだらと、硬派すぎる歌詞にのけぞりました。「炭坑スト断固支持!」「アパルトヘイト反対!」「行け!労働党!」・・・・・・。おいらの中学時代の思い出が・・・・。
2002/11/11
less 歌詞は確かにとんでもないです。それをオシャレに感じさせてしまうのが彼らの恐さなんですよね。
2007/06/10
Dr.Martha こんにちは。Dr.Marthaです。
このアルバム、僕の無人島アルバム候補第一位です! ちょっとしたきっかけがあって先日「僕が選んだ80年代のロック名盤たち40枚」を作ってみました。その中でも当然堂々の第一位がこのアルバムです。もし良ければ覗いてみてください。
http://web.mac.com/seefarmiles/iWeb/...
my dear.
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