サフラン湯
旅先で出会った印象深い銭湯をひとつ。まっさきに否定しておきますが、別にお湯にサフランは入っていません。
ひとけのない裏通り。トーンと抜けのよいカタカナの看板が目に飛び込んでくる。タイル張りのファサードはちょうど日本海の岩場が湛える深いグリーン。日のあたる鮮やかな「ゆ」ののれん。屋根には痩せた煙突がしゅるりと立っている。どちらかというと貧相なその平屋建ては、あり得ない調和によって、通りすがるものの前にすっくと立ち現れるのだった。…入らずにはおられまい。
入口から男湯女湯に分かれるのれんをくぐれば、すぐに脱衣所。木製の下足箱・ロッカーは年月を経ているがレトロというでもなく、手作りだったんじゃないかと思わせるような大味さが親しい。奥には小さな浴場があり、中央にたった一つ、大人5人が入ればいっぱいになってしまいそうな楕円形の浴槽がちょんと居座っている。浴場の壁三面には極めてシンプルなカランが並び、湯桶や椅子もまた、質素なものであった。…いい。何と言うか、ゆるい。もうこれ以上ないくらいにゆるゆるなのだ。いいなあ。
開店と同時に踏み込んだにも関わらず、15:30前になるといちばん湯を狙う地元のご老人方がぱらぱらと集まってきていた。終始客足が途切れることはなく、地元密着で長くやっているのであろう。一日の終わりを銭湯で締めるささやかな贅沢を知る地域住民の粋が、この文化を支えている。中には若い人たちも散見されたが、おそらく夏場は海水浴後の客か。このような人たちが、特別でなく、今後も銭湯を普段使いしてくれることを願わずにはいられない。入湯料は400円。タオルせっけんその他諸々、揃えられます。貸しタオルであれば10円という安さもうれしい。
ここの湯の特徴は何と言ってもその湯の熱さで、夏場だと言うのに体感から察して40°後半。四肢の先からビリビリと痺れが回る感覚が、熱湯フリークには堪えられない。いちばん湯であったせいもあるのかもしれないが、客に尋ねると平常このくらい、というかこんなのまだまだという勢いらしく、北陸の人は熱い湯がお好みなのかしら、と。しかし前述したように浴槽はひとつ。もちろん水風呂なんてないし、その上シャワーははじめから適温の湯しか出ない仕組み。湯船に浸かっては上がり、せっせとカランで水を汲んでかけ流せども、肌に帯びた熱は生半離れぬのであった。のれんをくぐって通りに出れば、湿気をたっぷり含んだ夏風すら心地よく。肌は真っ赤。これから行かれる方は湯アタリに気をつけるか…湯アタリを楽しむのもまた一興かと思われます。
帰り際に屋号の由来をチラと伺ったところ、創業昭和7年。今年で77年目に差し掛かるが、その名の由来は不明。創業者のおじいちゃんがつけたらしい。花の名前なんですけどね。なぜサフランだったのか…?その時代にしてはずいぶん…。インテリだったのかしら?と。どのような御仁であったろうか。その時代敦賀に住むインテリで…そうだなあ、貿易関係の仕事とか?をやっていたんだけども、半ば道楽まじりに銭湯をはじめて、内装外装も手作りでこつこつと。番台で英語の本なんか読みつつ、常連客と酒を交えて談笑し、趣味で草花を育て、充実した晩年を送った…とかだったらいいな。
JR敦賀駅からも近く、駅前商店街を抜けたところに見える滋賀系大型スーパー平和堂アルプラザ敦賀の裏手あたりにあるので、駅から歩いていけるんじゃないかな。すこしわかりづらいけれど駐車場も完備。まあ、車の人は平和堂に停めてもいい気がします。お近くに行かれた方は是非。
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住所:
福井県敦賀市津内町2-9-5
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- 営業時間: 15:30〜22:00(水曜定休)
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