フィリップ・K・ディック
映画「ブレードランナー」の原作
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
が有名なアメリカのSF作家。
もっとも数多くの作品が
映画化されたSF作家の一人らしい。
わりとSFらしいSFを書いていた初期より、
神経症を紛らわすためのアンフェタミン常用と
深刻な後遺症、友人知人をドラッグで
失うなどの経験を経て、その影響が色濃く
現れはじめるころの作品が一番おもしろく感じられる。
(とはいえたくさんは読んでないので
実際はどうなのか確信なし)
神秘的な体験を経て書かれた晩年の三部作と
いわれるものの最初の作品「ヴァリス」は
3度読みかけていずれも途中で挫折。
もはやSFなのかなんなのか、降参。
ヘタレなればなり。
*
夢中で読んだのはドラッグ常用後のころの長編が多い。
そして何度読んでもおもしろい。
再読しても訳が分からない部分はあるのだけど、
読むたびに深い感動を覚える。
「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」
「ユービック」
「流れよ我が涙、と警官は言った」
「スキャナー・ダークリー」
これらはいずれも、ドラッグやそれに類するものによる
意識の変容、現実(本当の世界)と虚構(偽の世界?)が
スルッと反転してしまうような恐怖を含んでいて、
なおかつ主人公たちはそれによって
危機的な状態に追い込まれたり苦しんだりする。
ある日、いままで自分があたりまえの現実だと
思っていた目の前の世界が、おかしなことになっている。
現実なのか幻覚なのか判断できない世界。
ある変化が徴となって現れはじめ、
ついに「この世界の確かさ」のようなものが
剥ぎ取られてしまう瞬間の恐怖!
荒唐無稽な話でありながら、
読んでいるこちらの背中がスーッと寒くなる、
皮膚にくるリアリティがある。
そしてまた、そのような事態に陥った主人公たちの、
絶望的な苦闘の過程がとても胸を打つのですね。
これは文庫本の解説に書いてあったのだけど、
ディックのドラッグ体験でもたらされた
悔恨や悲しみ、そして人間というものにたいする
深い愛惜が反映されているようだ。
「スキャナー・ダークリー」はドラッグで失った
友人たちを思いながら書かれた。
とても悲痛で、同時に愛情に満ちている。
*
もっといろいろ読んでみることにしよう。
SFを、単なるガジェット的な楽しみ
(宇宙、未来、異星人、などなど)だけではない、
深遠なものにした作家の一人だと思います。
- 2009/08/22更新
- 2009/08/22登録
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