洋酒天国
アンクル・トリス
昭和三十年代後半。
親父は時折ボクを神田の蕎麦屋に誘い、
その後で銀座のBARへ連れて行った。
酒は角瓶の「ハイボール」2杯と決っていて、
呑み終わるのを待つ間
カウンターの片隅でボクはジュースを貰った。
酒と煙草と怠惰な静寂を愛した親父は、「洋酒天国」を読みながらアンクル・トリスの楊枝入れを指先で弄び、時折その蓋の部分を開けたり閉じたりしては、
鼻から息をフッと吐いて微笑んでいた。
サントリー(旧・寿屋)宣伝部に名を残す
山口瞳・開高健・・。
存外親父は、二人の詞を呑んでいたのかも知れぬ。
今はボクも、そう思える歳になった。
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