ボウロウカンツイソウ
望楼館追想
イギリスの新人作家、エドワード・ケアリーの手による小説。出たばかりなのでまだ普通の書店で手にとることができると思うので、今のうちにぜひ。
ヨーロッパのどこかにある「望楼館」という寂れたマンションは、かつては「偽涙館」という、由緒ある一族が住むお屋敷を改装したものだ。そこに住む寂れたマンションに似合いの寂れた、半ば引きこもりの奇妙な面々のもとにひとりの女性がやってきてかき回すことでずっと止まったままだった時間が動き出す。
このまま、止まった時間を永遠に生きるという方法もあったに違いない。しかし、今にも崩れそうな建物である以上、いつかはそこから出て行く、もしくはその建物が崩れてしまう、という将来が予想される。歓迎せざる現実に目を瞑っていても時間は容赦なく過ぎていくのだ。
つまりはこの物語は、望楼館とそこに住む人々が過去に生きる人生に決別を告げ、未来に生きる(つまりは再生)ための手続きを情感たっぷりに描いたものなのだろう。
人びとの想いが擦れ違い、ほんの一瞬交錯し、そしてまた過ぎていく。その一瞬一瞬を細やかに掬い取り、半ばその世界に入り込んでいる読者にそっと垣間見せてくれる。ふるふるとふるえる魂が出会う一瞬があるのだ。これを感じるためにこの物語を読む機会を与えられたのではないか、とさえ思う。
本の残りの厚さを感じるたびに、この奇妙な館と住人たちと別れるのが辛くなってくる。最後に付記されている主人公の蒐集物を眺めながら、自分なりの物語を想像したりして、余韻を味わうことにしよう。
装丁も凝っているので、一度カバーを剥いでみて欲しい。
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滝本竜彦
- (ラー)
ひきこもり作家。 『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』と『NHKにようこそ!』(いずれも角川書店)の著者。上古のシャーマンのようにひたすら自宅にとじこもり&引きこもりつつ思索や読書を...
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望楼館追想
- Polepole Life | Tracked: 08.7.28 11:04 am
[画像] 望楼館追想当たりが多い。 多忙な中、借り出しが多そうなものの中から、 冒頭を立ち読みして選んできてくれているらしい。 いいのだけでも、面白さを共有したいの...
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