Black Porgy
血塗られたダイヤ
小春日和の日本海が好きなので
若狭の海まで出掛けたことがあった。
小さな入江に車を停めると
ボクは読みかけの雑誌を脇に抱えて
岬の先端まで歩いた。
その時ボクが読んでいたのは
「月間アフリカ」の2001年3月号で
それによれば
ダイアモンドの採掘利権をめぐって
未だに血生臭い民族間紛争が絶えないらしい。
故に、紛争地域で採掘されたダイヤを
特に「血塗られたダイヤ」と呼ぶ・・。
磯では老人が一人と若い二人連れが釣りをしていて
ボクは彼らの邪魔にならない場所を探してから
さほど尖ってはいない岩の上に腰を降ろした。
観れば老人はその道の熟練・上手であるらしく
潮目を狙って竿を入れれば
すぐさま獲物が掛かってくるのに対して
頭に手拭いを巻きつけた兄ちゃんと女の竿には
待てど暮らせどアタリが来ない。
「ま~たオッサンに釣られちゃったで」
「あんた下手なんじゃない?」
「るせぇ」
「ホントに厭になっちゃうんだから・・」
「まただ。ま~た黒鯛だで」
老人は見事な黒鯛を釣り上げても笑顔一つ見せない。
「ヤラレタでよう」
「悔しいッ」
彼らの焦燥に反して釣果は一向に上がらず
老人は身のこなしも軽やかに磯を伝い歩くと
新たなポイントで瞬く間にまた黒鯛を釣り上げた。
「黒鯛(チヌ)釣られた」
「嫌よ、もう」
若い男は諦めにも似た溜息を吐き
女はだらしない男に愛想を尽かしている。
「チヌられただ」
「いや」
後になって気づいたのだが
どうやら覗かれていたのは
ボクの方だった・・らしい。
- 2002/10/18更新
- 2002/10/18登録
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