タズ イチジテキジリツゾーン
T.A.Z.-一時的自立ゾーン
最近再評価著しいこの本、翻訳書には必ずあるはずの、コピーライト表記がありません。
何故なら、著者のハキム・ベイはこの本の著作権を放棄しているからです。従って本書は、『検認廃止』というお決まりの文句もありませんし、文章をどう引用しても自由です。
80年代に登場した反著作権運動の旗手、ハキム・ベイは、(多分)米国の思想家が変名で著述活動を行っている人物だといわれていますが、詳細はわかっていないようです。一ついえることは、現在、もっともラディカルなインターネット論壇の人々にとって、このハキム・ベイが、ナップスター裁判あたりと並び、重要な思想的バックグラウンドになっているという事実です。インターネットが情報の偏在を理論上皆無にしてしまったら、「著作権」という概念は意味を失い、資本主義の成立要件である、『情報や物質の偏在』は破壊される、というような議論ですね。
ただし、昨今のそういう論壇の人々の主張に反し、本書は基本的に社会論というよりはアート論であるという事実が忘れ去られがちな気がします。本書を読む限りハキム・ベイは、WEBを表現者のための場として捉えており、商業主義については最初から眼中にないように見えます。
イスラム原理主義、グノーシス主義、カオス理論、ビート詩人との交流、ドラッグカルチャー、そして、一切の「所有」を認めない(自らの著作権すらも)、ハキム・ベイの過激な主張は、一つの「極論」として読むに値する議論ではあると思います。そしてインターネットが商用開放されるよりはるか以前の1986年に、WEBの本質を、既にこうした形で暗示してみせたイマジネーションはやはり素晴らしいと思います。僕は、「インターネットはコミュニズムに近づく」という、一部のネット論壇の人の主張には組しませんが、ビジネスモデル偏重主義に陥っている(と、僕は思う)最近のインターネットについて語るとき、本書の精神は大切だと思っています。
インターネットで何かを表現しようとしている個人、アーティスト・クリエイターにとって、この本は必読ではないかと思います。小難しいけどね。(^_^;
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