ゴダール『恋人のいる時間』
ゴダール『恋人のいる時間』(1964年度制作 / 原題『ある人妻 (Une Femme mariee) 』)が 、02年10月26日(Sat) からシネセゾン渋谷で公開されます。
この映画の予告編の宣伝文句:
「映画が」
「映画であることを」
「うれしくて」
「はしゃぎまわる」
「映画」
「ゴダール」
↑これ、とっても、いい。
どんなお話なんだろうね。どんな映像なんだろうね。わくわくだね(うふっ)。
『恋人のいる時間』Trailer はこちら↓
http://columbia.jp/dvd/titles/...
あっ、それから、「37年間の沈黙を破って、今よみがえる『ゴダールによる快楽と愛の解剖学』」ってフレーズも、考えてる~。なんたってこの映画、日本では37年ぶりの再公開(ちなみに日本初公開は1965年2月20日 / 松竹映配)。わおっ、それじゃ、やっぱり、映画館に行かなくちゃ~(わい、わい)
『恋人のいる時間』:
http://www.zaziefilms.com/koibito/
* * * * *
02年11月9日更新内容:以下の文章を加筆、さらに、『恋人のいる時間』公開情報(東京以外)を追加
『恋人のいる時間』、見て参りました~。すご~くよかったです(わお、わお)。なので、一度見に行ったのち、一週間おいて再度見に行きました。二度目は、前よりもっと、よかったで~す(おひょ、おひょ)。東京での公開はまだ続くようなので、少なくともあともう一回は映画館に足を運んでしまいそうな予感で~す。
白いシーツ。滑るように伸びてくる、女性の細い腕。左の手の甲。薬指には指輪。太くて毛深い男性の腕。白いシーツを滑る。女性の手首をつかむ男性の右手。重なり合うふたつの手。小さくて白い手と大きくてごつごつした手。
なんて素敵な映像の連なりなんだろう。
たとえば、ひとつの石けんを泡立てながら、女性と男性が、水をためた洗面台で一緒に手を洗うシーン。石けんのぬるぬるした感触、泡。異なるふたつの身体の体液の混じり合いとしての性行為のメタファー。
なんてセクシーな映像の連なりなんだろう。
マーシャ・メリル (Marcha Meril) という女優さんが演じる人妻シャルロットの子鹿のバンビみたいな、しなやかさ、軽やかさ(道路を横切ろうとして転ぶシーンなんかも、ものすごくかわいいよ。おそらくはハプニング映像なんだと思うけど)。彼女は「現在」という時間しかもたない、動物みたいなアモラルな存在。だから「下心がない」。だから、「怠け癖」があって「嘘つき」だけど、かわいらしい。だれにも所有されようとしない。だから自由で美しい。
だけど、この映画、単なる "人妻の不倫のお話" なんかじゃないのは、もちろんのこと。
たとえば、黒地のスクリーンに白文字が浮かび、そのあとで、スクリーンに向かって自らの考えを述べ始める登場人物たち。「1. 追想」を語るシャルロットの夫。「2. 現在」を語るシャルロット。「3. 知性」を語るロジェ・レナール(という人物を演じているのが、映画評論家のロジェ・レナール)。「4. 幼少期」を語るシャルロットの連れ子の男の子。どれもみな、ゴダールの分身。
なかでもレナールによる次のような言葉は、のちに発展していくゴダール思想の要。
「日頃は気にかけない言葉が、聞いてしばらくすると重要な意味を持つ場合があるのは奇妙なことだ」
「知性とは肯定する前に理解すること。考えを極めようとすること。限界や対立点を探す…つまりは他者の理解だ。自己と他者。賛成と反対の間に少しずつ道を探ることだ。こんな知的モラルは現代では好まれない。色の際立つ時代。白と黒の間にニュアンスを求めるなどうっとうしい([と考えている時代])」
「こうして、女性の美しさは至上のものとなるのです。だから、フランス語で偉大な思想は女性形なのです。例えば、立像で表せるような "美徳" "共和国" "フランス" など…。」(註1)
『パッション』のセリフのひとつに「政治の話をしているつもりが、気がついたら恩寵の話になっていた」というものがあるのだけれど、この『恋人のいる時間』( 原題『ある人妻 』)という映画もまた、快楽と愛の話を聞かされているはずが、気がついたら歴史と政治の話に聞こえてくるところが、どこまでもゴダールっぽい。
この映画を見ながら途中なんどもゴダールの最新作『愛の世紀』を思い起こした。
『恋人のいる時間』公開情報(東京以外):
名古屋(名古屋シネマテーク)02年11月2日(Sat)よりロードショー / 大阪(テアトル梅田)02年11月23日(Sat)よりロードショー / 京都(京都美松劇場)02年12月18日(Wed)19日(Thu)20日(Fri)上映 / 浜松(浜松東映)02年12月23日(Mon)24日(Tue)上映 / 神戸(シネ・リーブル神戸)03年1月上旬公開予定 / 京都(京都みなみ会館)03年1月中旬公開予定 / 福岡(シネテリエ天神)03年公開予定 / 札幌(シアターキノ) 03年公開予定 / 金沢(シネモンド)03年公開予定 / 新潟(シネウインド)03年公開予定
註1:『恋人のいる時間』のセリフは「『恋人のいる時間』再録シナリオ」(字幕:寺尾次郎 / 再録:南川要一)より引用。ただし [ ] 内はわたくしによる補足。
- 2002/11/11更新
- 2002/10/26登録
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最新コメント5件
2002/11/11
Lucy 「くるくる鍵を落としたりしてホテルに入って行く」シーンとは、見知らぬ男性が偶然落とした鍵をなにげなく拾ってあげるような振りをしながら、ホテルの部屋番号を素早く読みとるというテクニックを披露してくれたシーンですね。う~ん。なるほど~(と妙に感心)。
2002/11/15
beatak 見てきました。劇場の中、一人で(静かに)笑ってました。ゴダールのユーモアのセンスにはいつもぶっ飛ばされます。あとタイポグラフィーのセンスも。一番最初の字幕の文字にはちょっと鳥肌が立った。
Lucy 実は私もこの映画を見ながら何度も暗闇で笑ってました。ゴダールの映画を見るたび私は必ずクスクス笑いをしてしまいます。時にはお腹抱えて笑っちゃうことさえあります。「ゴダールのユーモアのセンスにはいつもぶっ飛ばされます」。そうです、そうです、その通りです。ゴダールのユーモアのセンス。とにかく抜群です。ぶっ飛びます。「ゴダールとユーモア」というキーワードを新たに登録したいくらいです。ところで、「一番最初の字幕の文字」とは、白地のスクリーンに浮かぶ黒文字「ブラック」、それに続いて黒地のスクリーンに浮かぶ白文字「アンド、ホワイト」ではありませんか?
beatak じゃなくて、une femme mariee のウーアクサンテギュに惚れました。それに続く“・・ある主婦の断片”っていうのが画面いっぱい、字幕ででるじゃないですか。あれも含めアクサン記号の解決法&字組みが素晴らしい!と思いました。『Les carabinier』の手書き文字も素晴らしくて、あれはゴダールの文字らしいけど、une femme mariee はどうなんでしょう?
2002/11/16
Lucy タイトルの文字のアクサン・テギュに惚れちゃう。鳥肌が立っちゃう。実にゴダール映画ならではの体験ですね。う~ん、わかるな~。ゴダール映画のスクリーン上に現れる多くの文字たち。それらの活字の大きさ、書体、配置、構成。それらが映像との関係性においてどのような効果を生み出すのか、そんなことをぼーっと考えてるだけであっという間に時が過ぎてしまいます。あと、手書き文字も素敵ですよね。たとえば『JLG』での白いノートに書かれた手書きの文字。美しく、力強い。「une femme mariee はどうなんでしょう?」どうなんでしょうね?
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