ゴールデン・フリース
ゴールデン・フリース
ロバート・J・ソウヤーのSFミステリ。
*
謎解き要素を含んだSF=「SFミステリ」と言えば、J・P・ホーガンの『星を継ぐ者』から始まる3部作が有名です。
ホーガンを、ロジックと仮説の積み上げを重視する、直球の本格SFミステリとするなら、ソウヤーのそれは、「新本格SFミステリ」とでもいえそうな。
本作『ゴールデン・フリース』も、アイデア満載です。
*
こんな話。
・人類初の恒星間移民宇宙船内で殺人事件が発生。
・犯人は宇宙船を制御する万能AI(人工知能)。
あ、いや、ネタバレではありません。なぜなら:
・倒叙物(刑事コロンボみたいな)の形式でストーリーが展開。
・全編、AIの一人称で語られる。
つまり最初にAIの「わたし」が殺人を犯すシーンから始まるんです。AIは艦内の全てのシステムを掌握し、殺人の事実を事故として隠蔽しようとします。
嘘のようですが、これでちゃんと、SFとしてもミステリとしても成り立っています。
*
ソウヤーを読んだのは2冊目。
同作家の『ターミナル・エクスペリメント』を読んだときには、ホーガンと同じで、生真面目な作家なのかなと思ってました。
SFのアイデアはあるのに、読者アピールのために、ミステリ的な手法を用いてストーリー展開せざるを得ない、不憫な人なのじゃないかと。
ホーガンは徐々に、読ませる味付けをスパイ小説仕立てにシフトさせていったのでした。
ソウヤーはそんな風になってほしくないよなー、と勝手に希望してたのですが…。
*
まったくもって杞憂でした。
むしろ、この人は嬉々としてミステリを書いてます。ミステリのためにSF的な検証を甘くしているとも思える。そもそも、犯人のAIが「ひとつのプログラム」=「ひとつの自意識」しか持っていない、という点で、90年代のSF的にそれはどうなのよ、と突っ込みたくなります。
いやー、もうそんなことはどうでもいいのです。
だって面白いんだもん。
*
殺人を引き起こす原因になったトリックは笑えます。ソウヤーは日本の講談社ノベルズとか読まないだろうけど、読んだらびっくりするだろうなぁ…
そして、ラストの「動機の解明」。
SFとしか言いようのない大ネタです。
ミステリファンにこそ読んでほしい。
量子論わからないボクでも読めました。
このキーワードを共有する
-
トラックバック(0)







