君たちに明日はない (新潮文庫)、借金取りの王子 (新潮文庫)
この1月から始まるNHKドラマの原作本だそうで、本屋の平台に並んでいたものを昨年11月に購入。
主人公は、リストラ請負会社の社員です。企業が社員のリストラを外注する会社で、対象者に面接を行い、その人達の中から割り当てられたノルマの人数分だけ「自発的に」退職をするように仕向ける、というのがその仕事です。リストラを外注するーこのような企業は架空ということらしいですが、あっても全くおかしくないと考えてしまう、首筋が寒くなる設定です。読み始めると、結構気分が悪くなる本です。
本文で主人公が面接で行うやりとりは、読んでいて胃が痛くなるほど気分が悪くなります。説得と誘導、時には、辛うじて残っているプライドをへし折る冷徹な言葉も混じり、優遇措置と引き換えに自己都合退職を受け入れさせる。自分の能力とキャリアを冷静に見つめて手を打ってこなかった社員に対して、相手の気持ちの変化を冷静に観察しながら、容赦なく静かに攻めていきます。本当に夢に出てきそうな情景です。そもそも「君たちに明日はない」という書名も不快です。
さらに気分悪いのは、この主人公が、非常に軽薄な、しかも年上好きの女たらしのキャラクターとして描かれています。こんな軽薄な人間に自己都合退職に追い込まれる、ということで、ヤな奴という印象が植え付けられます。この主人公と、最初の章に登場する女性との二人が、続編「借金取りの王子」まで通して物語の軸となっています。
ただ、よーく読んでいくと、この主人公なりの仕事の進め方のルールがあり、それに従って、様々な人に手助けを出していくことも見えてきます。さらに続編は主人公の面接対象者が物語の中心であり、人物内面の描写も主人公より面接対象者の方が多くなっています。主人公の意図とは関わりなく、面接は自分のするべき仕事を自分で見つけていくきっかけとなっており、結果としてより良い方向に動いていきます。このような転職も、確かに人生の一つのあり方でしょう。今居る場所にできるだけしがみつくのが一般的には良いことなのでしょうが、そういう暗黙の前提から離れた自由な発想の下で、自分を信じ自分で自分の道を決めること、一度しかない人生でそれができれば幸せなことだと思います。
現実の世の中はそのような良い結果に終わらないことが多いにしても、そのことを意識して生きることによって、未来は変わることでしょう。
舞台も主人公も、すっきり爽快(!)な物語ではないのですが、さらに続編が出ればやっぱり読むと思います。
作者を全く存じ上げなかったのですが、ここまで書いた後に検索した公式webによると、しばらく心の病で苦しんでおられて、ようやく主治医によれば9割の仕上がり、だそうです。「最近は『生きている喜び』のようなものを実感できる日々が多くなったような気がします。」とのことで、何よりです。
(このkwは、「本部」コミュニティの「本部当直」に書いたものです。)
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コメント (1)
2010/01/23
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