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アイコクサツジン

愛国殺人

 Agatha Christie著。訳は加島祥造。
<その物語>
 その日エルキュール・ポアロはひどく心が沈んでいた。その日は歯科に通院して検診を受ける一年に二回やってくる彼にとっての「厄日」だったからだ。ポアロが通う歯科の医師の一人ヘンリイ・モーリイは優秀な歯科医であった。彼の診察をすませてポアロは晴れ晴れとした気持ちになった。彼はタクシーの運転手に次のように話しかけた。
  「…歯医者のかえりなんですよ。これであと半年ゆか
 なくてすむと思うと、まったくありがたい」
 憂鬱な義務を終えたポアロがランチをすませて安穏としている最中ジャップ主任警部から電話がかかってきた。なんとモーリイ氏が自殺したというのだ。ポアロとジャップはモーリイの死の真相を探るために彼の近親者、診察を受けていた患者や関係者のもとへとむかう。
 モーリイが診察を行った最後の患者、ギリシア人のアムバライオティスの麻酔薬の投与過量による死。モーリイの死は医療ミスを苦にした自殺だったのか?一方ではアムバライオティスの前に診察を受けていた元女優のメイベル・セインズバリイ・シールの失踪。それから一ヶ月後、彼女の訪問が目撃されたアパートの一室から発見された部屋の住人シルビア・チャップマンの死体。そしてモーリイの死の当日治療に訪れていた銀行頭取アリステア・ブラントを狙った連続銃撃事件…。モーリイと犬猿の仲でブラント銃撃事件の容疑者として逮捕されたフランク・カーターがもっていた拳銃は「モーリイを射殺したものと一対になって」いた。おりしもモーリイの予想死亡時刻の直前にカーターがモーリイの診療室に向かおうとしていたという証言がなされる。
 モーリイの殺人事件がカーターの手によるものとされるなかポアロは事件の真相へと近づいていく。そしてポアロと真犯人の対決。
  「全国民の安寧と幸福が一つに、この私の上にかかっ
 ているのをおわかりにならないんですか、ポアロさ
 ん?」
  「私は国家のことなどに従っているのではありませ
 ん。私のたずさわっているのは自分の命を他人から奪わ
 れない、という権利を持っている個々の人間に関するこ
 とです」
 物語はポアロから若い二人のカップルに贈られた言葉で閉じられる。
  「世界はいまやあなた方のものです。新しい天地。あ
 なた方の新しい世界に、どうか自由とあわれみが残りま
 すように……私の願うことはそれだけですよ」
<メモランダム>
 筆者にとってこの作品はポアロシリーズで一番印象深いものである。そして『カーテン-ポアロ最後の事件-』を読むたびにこの作品でのポアロの姿を思い起こして無性に哀しくなる。

愛国殺人

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投稿者:
TakeO
詳細情報
  • 原題: THE PATRIOTIC MURDERS
  • 人名: Agatha Christie
  • 加島祥造
  • 発売元: 早川書房
  • 2002/10/30登録
  • 1780クリック

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