コンニチハ、バネッサ
こんにちは、バネッサ
お友達がひとりもいないねずみの女の子バネッサ。お母さんにはたくさん友達がいます。来客があってもバネッサは「こんにちは」が言えません。学校でも授業では大きな角のあるオオジカ、クインシーの後ろに座ります。かげに隠れた方がいごこちがいいのです。
「ともだちをつくるって世界でいちばんおっかないことにちがいない」と考えるバネッサ。お母さんはそんなバネッサに「こんにちは」ってだれかにいってごらん、とすすめます。バネッサは勇気を出してお母さんの言われたとおりにしてみますが、いつも失敗してしまう…。「もうこんにちは、は言わない」とかたくなになっていきます。
ところが、授業で、実はバネッサだけがわかること問題がだされます。幾度かこれもチャンスを逃しますが、3回目の質問で、「わたしは知ってる」という思いが強くなり、自信をもってみんなの前で発言します。
このことをきっかけに「教えてほしい」と、クインシーがバネッサに話しかけてくれます。そして、なんとバネッサの家に遊びにきてくれるのです。
クインシーと暖炉の前で「お友達がいるってすてきなことね」と、しみじみというバネッサ。
内気な女の子の心のゆれが繊細に描かれています。
(クインシーも実にユニークな個性をもっていて、読んでいて思わず笑ってしまいます、子どももここでうけます、バネッサと気が合うことだろうとなんとなくわかります)
これを読み、挨拶のことばの重みと、自己肯定感について考えさせられました。
「こんにちは」って簡単にでてきそうで案外難しいことばです。挨拶ができないと嘆くお母さんに私はよく会います。でも、実は「こんにちは、おはよう」などは、コミュニケーションのスタートを切ることばですし、言えばほとんど相手から何かが返ってきます。それを聞くことは、お子さんによっては、緊張をもたらせます。また、「こんにちは」を交わした後、何を言えばいいか、または言わなくてもいいのかと、言葉を獲得しはじめ、かつコミュニケーションが交わしにくいお子さんにとっては、実に曖昧な悩ましい言葉でもあるのだと感じています。
自己肯定感についてですが、バネッサのお母さんは決して厳しいお母さんではありません。バネッサの悩みに真剣に向き合い細かくアドバイスをしてくれ、励ましてくれます。
でも、どうもうまくいかない、そんなとき、得意なことが一つあったバネッサ。その力を自分で感じ、思い切って発言した、その結果、思いもよらぬことに友達が一人できた。自身で獲得したものは、子どもの自己肯定感、(自己効能感といってもいいのでしょうか)、につながっていくのではないかと思いました。これも人間(絵本では動物ですけど)の間でこそ、培われるものだと思いました。
著者はアメリカのマージョリー・シャーマットさん。(訳小杉佐恵子さん)
絵は『ジャムつきパンとフランシス』『フランシスとおともだち』などの、ラッセル・ホーンの作品のさし絵を手がけたリリアン・ホーバンさん。とても可愛らしいやわらかな、あたたかみを感じる絵です。
年長さん~小学生中学年くらいまで読める本かなと思います。大人にもお勧めしたい絵本です。
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