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きっこーまんのしょうゆさし 

キッコーマンの 醤油さし

  • キッコーマンの 醤油さし  の画像

これで醤油さしたことないって日本人、少ないと思います。
誕生は約50年も前。

この瓶、数年前、ニューヨーク近代美術館に永久保存される事が決まったようですね。
2009年にはグッドデザイン賞受賞。

皆さんの家にもありませんか?
さりげなく食卓にMoMAコレクション。

MoMAコレクションに入る事もすごいのかもしれないけれど、
何十年も経っても、これほどまでにデザイン性や機能性を評価される商品はなかなかありません。
めまぐるしく変わる商品デザインの中で、数年存在するものだって少ないんですから。
カッコいいだけでは愛され続けない。

デザインしたのは、バイクや成田エクスプレスなども手がけるインダストリアルデザイン会社、「GK」の代表、榮久庵憲司さん‥‥と言われています。

3月17日。

すみません。
この日ばかりは、ちょっと補足を。

この醤油さし、実際のデザインをしたのは、当時GKの社員だったある若夫婦でした。

インダストリアルデザインの会社自体その時代には珍しく、請け負う仕事はみな手探り。
太陽の塔で知られる、あの大阪万博のベンチやゴミ箱、トイレスペースなどのデザインも、この夫婦がやっていました。
東京オリンピックより前ですから!
今でこそパビリオンを繋ぐ公共のスペースに置くグッズのデザインなんてすぐ目に浮かぶかもしれないけれど、海外に向けて開くイベントは日本初。
宇宙人を6千4百万人招くのと同じ感覚だったかもしれません。

そんな二人の若夫婦に、キッコーマンの吉田節夫さんという人が夢を託しました。

その夢‥‥

日本の醤油を、世界の醤油にする。

という夢。


当時、日本の店頭には樽や一升瓶などの大きな醤油しか並んでいませんでした。
キッコーマンの吉田さんは、どうしたら醤油になじみがない海外に売れるのか考えた。
そして、「手軽な醤油さしごとスーパーに並べなきゃいかん!」と気がついたのです。
醤油さしに醤油を入れた状態で売るなんて発想がなかった時代でした。
そこで若夫婦と試行錯誤を繰り返し生まれたのがこの瓶。

そして吉田さんは世界各国にこの「醤油入りの醤油さし」をひっさげ売りに走った。

その結果、キッコーマンの醤油は日本の醤油の販売方法をも変え、この瓶とともに世界の醤油になっていったのです。
海外に行った際、Soy Sauceと書かれたこの瓶を見かけた方もいらっしゃると思います。


キッコーマンではその後、何年かして、デザインをリニューアルしたそうですが、ちっとも売れなかったらしく、また元のこのデザインに戻したそうです。

わかるわかる。

しょう油といえばこれだから。
この赤いフタにこの形をみると、しょう油の香りがしてくるほどデザインと商品が一体化してしまってるせいかなあ?(笑)

けれども
グッドデザイン賞取ったのも、MoMAに永久保存されたのも、デザインした元若夫婦の耳には入らなかった。

その夫婦の女性のほうは、醤油さしデザイン後 乳がんにかかり、万博を終え間もなくして、のちの昭和61年3月17日には二人の男の子を残し、この世を去っていたからです。



もし、
生きていて受賞を知っても、
賞のことなんか関係なさそうな女性でした。

病床で描いたのは、シンプルな花のスケッチ。
それは画集になってお葬式で配られました。

GKの榮久庵さんが、この画集に添えて、素敵な、そして的確な言葉を残された。


「‥‥どんな佳人でもどこか心の蔭が人前をよぎるものである。
 彼女にはそれがない。
 湿気のない光で、乾き切った白砂を
 分厚い桧の板の上に撒いたような人柄、
 晒した麻の布を手にしたあの感触‥‥
 濯ぎに濯いだ魂を
 よくぞ短い一生で創りあげたものだ。

 ‥‥彼女の美醜の境は常にはっきりしていた。
 そして選択は本能的であった。
 女の醜さ、男の醜さ、人間の醜さ、
 これ等を通りいっぺん知るだけでも
 一生も二生もかかるところだが、
 彼女にとってはそんな面倒な手続きは一切必要としなかった。
 そのままの人、苦労の見えない人、
 私はそれを天才といいたい。‥‥」

無駄がなく、潔いデザイン。
デザインを二人に託した、ただならぬ榮久庵さんの眼力を感じます。


それから、商品ヒットの鍵を握ってたキッコーマンの吉田さんも2005年急逝。
もうこの世にはいないのです。

一方‥‥‥
若夫婦の男性の方は、もうずいぶん前に現役引退して、孫にデザート作ったり、人にお絵描き教えたりして気楽にすごしている様子。
何の賞取ろうが、MoMAに保存されようが、孫へのデザートのゼラチンの割合の方がよっぽど大事そうに語る。


変わらないのは
この醤油さしと、お酢入れ用に中身を詰め替えたアメリカ建国200周年のボトル。
夫婦の様にならんで 何気なく この年配男性の食卓に、ひょいって置かれている事でした。



キッコーマンの 醤油さし

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