コスモポリタニズムの演奏スタイル。そんな
東京クァルテット1973:シューマン・弦楽四重奏曲No3
東京クァルテット。彼らの登場が、世界の弦楽四重奏団の水準を変えたと言っても過言ではないでしょう。1969年、「ジュネーブ国際コンクール」(弦楽四重奏・部門)第1位。桐朋学園大からNYのジュリアード音楽院に留学中の四人により結成。原田幸一郎、名倉淑子(第1、第2Vn)、磯村和英(vla)、原田禎夫(VC)。
当時の弦楽四重奏団(String・Quartet)の大御所といえば、ジュリアードQ(米国)(以下、略語・Qで)、ブタペストQ(〃)、スメタナQ(チェコ)、バリリQ(オーストリア)、アマデウスQ(英国)、ボロディンQ(旧ソ連)etc。
西欧古典音楽の作曲の基礎は、ハイドンの登場により、「四声書体(ソプラノ、テナー、アルト、バス)」で書くことがベースに。音楽学校の作曲の初歩的な教科書を覗くと、「この旋律に四声書体で和声付けせよ」、「四声書体で四声の遁走曲(フーガ)を展開せよ」といった課題が一杯。ですから西欧古典音楽のエッセンスは、この書体がベースの弦楽四重奏曲に具現されると言っても過言ではないようです。
そんなジャンルの音楽ですから、4人の弦楽器奏者の力量がモロに分かり、当の奏者たちにはコワい。逆に、アンサンブルの妙味を4人で徹底的に追求できます。そのことを私にはじめて強烈に印象づけた最初で最後の弦楽四重奏団が、東京クァルテットでした。
もう一点。これが重要なのですが、彼らの演奏スタイルです。上記Q、には各々、特徴がある。どの団体も聴いたらすぐその団体と分かる“音の癖”がありました。
しかし、東京クァルテットは違いました。旋律の歌わせ方の方法(=フレージング)、いわば「音楽の横=時間軸」と、「アインザッツ(einsatz )」(合奏の際に、4人が正確に同じ瞬間に鳴らす、つまり演奏の縦の線を揃えるための技術)、いわば「音楽の縦の軸、和声構造」、この二大要素の統一を、4人は彼らの先輩格の団体以上に、徹底化して実践しました。そこから産まれる音楽は、たとえばスメタナQ(ボヘミア的な弦楽の音色)や、バリリQ(ウィーンの伝統的なやはり、音色美)に聴けたような“民族性”とは一線を画していました。むしろその要素を捨象した、コスモポリタニズム様式、と呼べるような、無国籍的な演奏スタイルです。
これは、指揮者の小澤征爾氏が創り上げる音楽にも共通のような気がします。
とは言っても技術至上主義ではなく、そこには生きた音楽の躍動感が息づいています。日本人が西欧クラシック音楽を演奏する意味について、東京クァルテットは常に考えさせてくれる存在です。
本CDは1973年、「東京FM」で放送されたライブ録音(於・東京文化会館小ホール。1973年5月7日)。ワシントン・国会図書館蔵の名器「アマティ」を貸与され、音色感も統一された美しい演奏が聴けます。
・・・・・・・・・
●シューマン・『弦楽四重奏曲No3』: 「四声書体」であるため、ローベルト・シューマンの作曲様式が、可視的なかたちでよく現れています。同時に、むせ返るようなロマン的な感情も、そこには・・・。とくに第1、第3楽章の演奏が優美です。
●モーツァルト・『弦楽四重奏曲No19ハ長調K465』: 上記の「フレージングとアインザッツ」の統一感が、じつに見事です。「ジュネーブ・コンクール」審査員満場一致の第1位、が頷ける、そんなモーツァルトの演奏です。
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コメント (4)
2010/06/28
たまる 小澤さんの音楽も、anoanoさんがお書きになっているように、音楽の中にある民族性であるとか、付随されるものよりも 、譜面にある作曲家の言葉である音符を正確に表現する・・という意味で、それまでにない新しさがありましたね。東京カルテットの演奏にも、清新な響きがありました。原田さんがメンバーであった時代の演奏、いまもそうですが、ほんとうに新しい「おと」として、わたし達を喜ばせてくれたものです。ステキなキーワードをありがとうございます。今夕は、東京カルテットの音楽を聴いて、眠ります(>_<)
anoano 今晩は。小澤さんは旧字でした。失礼致しました(笑)。丁度、ヴィオラを習い始めた頃でしたので、磯村和英さんが精神的な師匠でした。現在のメンバーも、氏と池田菊衛さん(名倉さんの後任)が残り、この団体の精神は保持されているようですね。ベストはハイドンでしょうか?あと、『死と乙女』!! ウンジャン(1st.Vl)時代にライブを聴きましたが、ここまで完璧にできるものかって驚愕するばかりでした。お気遣いいただき、有難う御座います。生きているとなにやら、様々なことが起こりますね。たまるさんも、ゆっくりとお休み下さいまし。
2010/07/01
Poughkeepsie wikiを見ていたらセサミストリートにも出演してたんですね。他にも先達の素晴らしい演奏の一端を聴けてよかったです(私の好みは多分に「ボヘミア的」/笑)
anoano Poughkeepsieさん、今晩は。いかがでした?我が精神的師匠、ヴィオラの磯村和英氏の柔らかな対旋律の音色は(笑)。このチャイコの「アンダンテ・カンタービレ」は、たしかCD、出ていないと思います。下のクロノスQのジミ・ヘン・「パープル・ヘイズ」も楽しくて・・・・。あっ、私、勿論、スメタナQも好きですよ(汗、、、)。
コメントをありがとうございました。
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