性の痕跡が立ちのぼる写真集。そんな
連夜の街:石内都
この写真集が醸し出す強烈な物質感は並大抵のものじゃありません。最初に中身を見た十数年まえの印象は、改めていま確認しても硬調のモノクロームの質感が、強烈に迫ってきます。石内都(Wikipedia)の第三写真集です。『連夜の街 Endless night 2001』(1981)。この写真家のデビュー作・『絶唱、横須賀ストーリー』(1977)。そのザクっとした構図の取り方、横須賀の街の迫り方が凄くて、そのころよく写真のことを知っていなかった私(いまでもそーですが)にも、写真家の才能って厳然とあるってことにはじめて気づかされた、そんなフォトグラファー。
『連夜の街』。よーするに遊郭街のことです。もっといえば「悪場所」、「赤線」。日本各地のかつての「その場所」を訪ね歩き、撮っています。
1958年の「公的」な意味での「赤線廃止」で、その場所と建物はアパートや誰もいない廃屋と化しますが、彼女が発見して撮り上げた建築物。そのさまざまなディテイルがここに提示されています。男女のもっとも根源的ないとなみに付随する、ある種の汚濁感を払拭するためでしょうか、建物じたいがまずモダン。
たとえ木造、木造モルタル造りとはいえ、入り口(ファサード)が「帝冠様式」だったりアールヌーヴォー風であったりと、戦前から戦後数年後までの、これは建築デザインの貴重な実例集ではないでしょうか?
内部もお洒落な建物揃い。はめ殺し窓のステンドグラス、日本的にも東洋風にも洋風にも見える、いわば無様式な、1980年代的に言えば、じつに「ポストモダン」的。なぜかどの建物にもあるさまざまなまねき猫、ハート型に切り取られた窓枠と、内部ののぞき窓、etc,etc.
でも、この写真集の本領は、そんな細部に宿っている過去の性の痕跡、それがぬうーって感じでたち昇り、見る側に迫ってくるところでしょうか?
http://www.7netshopping.jp/books/...
- 『連夜の街 Endless night 2001 石内都写真集』・ワイズ写真叢書7 ワイズ出版
- 初版・朝日ソノラマ:1981年7月25日
- 価格: ¥3675 「セブンネットショッピング」
- 2010/09/01更新
- 2010/09/01登録
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コメント (4)
2010/09/02
wahei 石内さんの写真の迫力、確かに性的なものと類似するところを感じますね。性って、人間の影の存在というか(表だったら何かと問題を起こすし、かといって影のない人間は存在しえない)。ところで、性をいわば日陰者にしたのは、なんなんでしょうね。江戸時代やインドじゃ、なんだかとても開放的に性が描かれていたようにも思えるのです。
anoano 「性の隠蔽」ですね。全く個人的な感想なんですが、日本の場合、明治以降の近代化と関係あるのではないか、と。「アカルイ未来」(?)の創出に、「性的なもの」の隠微さは国家戦略的には邪魔者ですから。ここで撮られている遊郭建築の全てが、明治以降に建てられてたものなんです。隠すから余計にエロスが発動してしまう。石内さんのカメラは、そのエロスの発動を奇しくも捉えてしまうんです。それはともかく、彼女のデビュー当初、どエライ才能の写真家が出できたなあって思いましたよ。
wahei 性の隠蔽と明治以降の近代化の関連、私もそう思います。性の隠微さは、どこか効率化を排する面がありますよね。しかし同時に、隠微さを日本から隠そうとすればするほど、それが露呈してしまうのも、近世以降の日本には「隠す文化」がしっかりと根付いていたからだという気もします。隠す文化の上に、飾り立てる文明をのっけたのが日本の近代かなって。駄文失礼しました(^_^;)
anoano あっ、なるほど。Waheiさんのほうが正確ですね。「隠す文化の上の飾り立てる文明」。どこかで使えないかなあ? もちろんwaheiさんのクレジット入りで(笑)。
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