ベック / オディレイ
Beck / Odelay
96年作品。想像力豊かな男が創り上げた絶妙のひねくれ音源集『オディレイ』。前作『メロウ・ゴールド』から飛躍的に膨らんだイメージを纏めることなく野放しにし、好き勝手にコラージュしまくった最高の音源集『オディレイ』。開けたら最後ユー・キャント・ストップの音源集『オディレイ』。ああ、もう言い方は何でもいい、ともかく頭をぶっ飛ばせる傑作が『オディレイ』なのだ。もし聞いたことがないという人がいたなら、どうか僕の駄文を少しでも参考にしてくれれば幸いである。
これまでにないこの完成度は、きちんとアルバム用にレコーディングに挑めたからこそ生み出せたのは間違いない。実は、前作『メロウ・ゴールド』にしても『ワン・フット・イン・ザ・グレイヴ』にしても、ベックは意識的にレコードを作ろうと考えたわけではなかったという。だが、”ルーザー”という若者のアンセムソングを生み出し、ニルヴァーナ亡き後の新世界ローファイを開拓した「ベック」という名のブランドが全米に知れ渡ってしまったことで、彼のレコードに対する見方は自然と変わってきてしまったようだ。
共同プロデュースにはイールズを手がけたことでも有名なダスト・ブラザーズ。ジョン・スペンサー・エクスプロージョンのラッセル・シミンズやジャズ界の巨匠チャーリー・へイデンもこのアルバムに参加した。音を細かく説明すればフォーク、ジャズ、カントリー、ロック、パンク、ブルース、ヒップホップ、サンプリング、ノイズ、オルタナ、ローファイがサンプリング混じりに繋ぎ合わされて、すかされまくっている。次に何の音がくるのか全く分からないのがはじめて聞いたときの感想で、それでも充分ワクドキするが、何度も聴くと余裕を持ってベックの才能を感じ取ることができる。俗に言うスルメみたいなアルバムとはこのことなのだ。そうなるとこのサウンドコラージュは外しようのないベックという世界を表していることになり、僕はその得体の知れないCDを何度も擦り込んで楽しめてしまっているのだった。
近年『ミッドナイト・ヴァルチャーズ』(99年)が発表されたとき、一つなるほどと思ったのは、彼は本当に音楽が好きなんだなあということだった。このアルバムでは初めての試みであるファンクがフューチャーされているが、ベックはいつでもそうであるようにその音楽への没入を忘れてはいない。彼がうわっつらをとっただけのアーティストでなく、真にそういった音を奏でたいという強靭な意志の表れなのだということをここで僕は理解したのだ。『オディレイ』の時代のベックもまた、こういったミクスチャーの世界に従事し、逡巡しながら形を仲間とともに探していたのだろう。だからこそ、音は最高にカッコよく、もはや何のジャンルなんて言葉は必要ない、ごちゃまぜのスープを僕等に飲ませてくれたのだ。
”デビルズ・ヘアカット”(#01)から”ディスコボックス”(#14)まで僕の心をかき乱してそして掴んでくれる96年が生んだ珠玉の名作集『オディレイ』。オルタナ青年のボヤキが詰まった、恍惚の詩集『オディレイ』…「いいかげんにしろ!」とそろそろ突っ込みがきそうなので褒め言葉はこの辺で…
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