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クェーカーの刑務所 (クェーカーのけいむしょ)

  • クェーカーの刑務所の画像

 フィラデルフィアの刑務所が数年前に再開発対象となっていて、最後のツアーに行き損ねて残念だと思っていたら、結局再開発はとりやめとなり保存されていることを最近知らされた。よかったよかった。

 というのもここは非常におもしろい刑務所で、クェーカー/シェーカーの教義に基づいて作られているというユニークなところなのだ。

クェーカー/シェーカーはキリスト教の一派で、文明に毒されない簡素な生活を送ろうとしているという意味では、ハリソン・フォードの出たなんとかいう映画に出てくるアーミッシュと似ている。クェーカー・オートミールというのを知っている人もいるかもしれない(大きなスーパーなら結構置いている)。あれはこの教団の質素な食糧をイメージとして使っている。クェーカー/シェーカーと呼ばれるのは、この人たちが宗教儀式の中で、ある種の宗教的エクスタシーに達してガタガタ震える (Quake/Shake) からだ。クェーカーとシェーカーがどこまで同じでどこまでちがうのか、ぼくはよく知らない。

 かれらの生活習慣は有名だけれど、なぜそうしているのかとか、かれらの教義は何なのかとか、知っている人は少ない。かれらの教義は、性善説だ。人間は生まれながらにしてよい。人が悪くなるのは、外部の悪に触れるからだ。外部の悪に触れなければ、人は善でいられる。

だからかれらは、文明(つまりラスタファリアン的にいえばバビロンの悪ですな)となるべく接触しないように暮らすのだ。

では、その教義からくる刑務所とはどんなものか? もちろん。それは悪と接触させない場所だ。人を完全に隔離孤立させれば、人は自ずと善に向かう。そのためにはどうすればいいか? もちろん普通の刑務所的な措置(鉄格子や小さい窓)はある。でもそれ以上に、ドアも小さく、窓も小さく。他の囚人の声が聞こえないようにするためだ。配置はもちろん、ほかの囚人の房が絶対に見えないようになっている。壁を思いっきり厚くする。壁ごしに囚人たちが相互に交信しないように。またトイレ水道のパイプ類も、幾重にもインシュレーションをかましてある。パイプを叩いて囚人たちが交信しないように!

この構造を見て、フーコーのパノプティコンを思い出す人もいるだろう。「見られることはあっても見ることはできない」。まったく同じ発想が、この刑務所の背後にある。そして、それは普通は光学的な話だと思われているけれど、そんなのを遙かに上回る隔離が大元でも行われていたというのは興味深い。

 この刑務所は、その後全米のほかの刑務所にも真似されて、大きな影響を与えている。

クェーカーの刑務所

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投稿者:
山形浩生
  • 2002/12/11登録
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