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第一部

奥の細道・平成風狂句

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              序

<月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。
舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらえて老をむかふる物は、日々旅にして旅を栖とす・・・。>

いつのまにか歳をとって、今年はいったいどんな年だったのかも記憶に残らぬようになった。

揺れ動く時代に生き、その時々の人々に支えられて老いを迎える者は、今日も風のざわめきに時の移ろいを覚え、照顧して槿花一日を想う。

             深川

(1) 草の戸も 住替る代ぞ ひなの家   芭蕉   

    枝折戸に 春風匂う かざぐるま   涙腺子   

この時を待って住み棄てた家にも、また新たな借り手が移り暮らすことだろう。その戸口に立てかけられた風車で遊ぶ子供らの、明るい声が聞こえて来そうな春の陽の暖かさよ。

             千住

(2) 行春や 鳥啼魚の 目は泪   芭蕉

    雲ひとつ 千切れて今朝の 舟出かな  涙腺子


過去を棄て、友を棄て、それもまたやむなき別れなのだ。
群れ動く安寧の場所から離脱する、寂しいまでに爽やかな今日のこの日であることか。

              日光

(3) あらたうと 青葉若葉の 日の光   芭蕉

    桔梗紋 三猿の明智 影さして  涙腺子

    剃髪て 黒髪山に 衣更   曾良

    宗悟なる 墨染めかろき 春の山  涙腺子       
陽明門に秘められし謎の桔梗紋。何れは語られるべきことを、今は三猿の知恵に倣い、黙して去り行こう。

            裏見の滝

(4) 暫時は 滝に籠るや 夏の初   芭蕉

    しばらくは 裏見も花と まわり道  涙腺子

滝裏の祠の如き岩窟に、身を潜めて今は遁世の旅。世の中を裏から眺めるそれもまた、何やら面白い趣向ではないか。

             那須
 
    かさねとは 八重撫子の 名成るべし   曾良

    草刈の 馬も嗅ぎ分く 昼餉かな  涙腺子

野辺に咲く撫子に囲まれて、農夫が貸し与えてくれた馬に乗る。
おそらくその子供たちだろう娘が後を追えば、馬もまた振り返って「かさね」と名乗る娘と別れを惜しんでいる。

             黒羽

(5) 夏山に 足駄を拝む 首途哉   芭蕉

    峠来て 下駄の鼻緒も 夏時雨  涙腺子

修験道・光明寺の行者にあやかり御堂に参拝する。汗に塗れた山越えの、ようやく辿り着いた峠に降る雨は、火照った身体に沁み込むようだ。

             雲巌寺

(6) 木啄も 庵はやぶらず 夏木立   芭蕉

    雛と来て ともに一夜の 雨宿り  涙腺子

雲巌寺・仏頂和尚山居跡の庵に向う。啄木鳥も畏れ多いと穴を開けぬこの庵だが、今宵は雛と共に吾らを慰めてはくれないか。

             殺生石

(7) 野を横に 馬牽むけよ ほととぎす   芭蕉

    殺生の わきに出でゆと 馬返し  涙腺子

殺生石脇の河原には、鳥も獣も近づけぬ出湯が湧き出ている。
首を縦に向けぬ馬でなくても、その殺伐たる風景には声も出ないだろうに。

              芦野

(8) 田一枚 植て立ち去る 柳かな   芭蕉

    畦道に やしろの杜の 枝垂れかな  涙腺子

西行法師ゆかりの柳を訪ねる。早乙女の営みを見守る鎮守の杜は、田の畦から僅かに離れて小さな木陰を造っているのだ。

              白河

    卯の花を かざしに関の 晴着かな   曾良

    改めて 雪とも思え 野辺の花  涙腺子

能因法師が詠みし歌『都おば 霞と共に 立ちしかど 秋風ぞ吹く 白河の関』など思い浮かべながら、白河の関を越える。辺り一面に咲き誇る卯の花は雪の如く、身が引き締まる思いだ。

              須賀川 

(9) 風流の 初やおくの 田植うた   芭蕉

    関越えて ことの始めの 苗ひとつ  涙腺子

白河の関を越えればようやく「みちのく」へと入る。もう随分と歩き続けて来たのに、ようやく旅は始まったばかりなのだ。まるでそれは、秋の実りを祈って苗を植える期待と不安に、何と似ていることだろうか。

(10) 世の人の 見付けぬ花や 軒の栗  芭蕉

    破れても 庵の萱に 毬ふたつ  涙腺子

栗の木は西に在る木と書いて西方浄土にゆかりの樹木だ。行基菩薩は栗の木を杖として愛用したようだが、同じように世を棄てた僧が、この山奥の地にも庵を結んで栗を植えている。
その軒端に咲く栗の花も、何れ実を結んで毬栗(イガグリ)を、萱葺き屋根に降らせることだろう。


以下続く。



 

奥の細道・平成風狂句

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涙腺子画像 投稿者:
涙腺子
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  • 地域: 深川~須賀川
  • 2006/10/02更新
  • 2002/12/12登録
  • 1512クリック

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コメント (6)

最新コメント5件

2002/12/12

涙腺子 ぐわんばりま~す(笑)。

ゆきち 頑張ってください。その次は、古今和歌集でも(笑)。

2002/12/13

涙腺子 加筆してみました。この先果たしてどうなりますか・・(苦笑)。

SSMG おお!そう来なさりましたか。ぱちぱちぱちー。

2002/12/14

涙腺子 今回はカタチにするまでが大変そうで、加筆修正の回数が増えますね(苦笑)。

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