セラピー? / トラブルガム
Therapy? / Troublegum
鮮明なまでに叩きつけられた生粋のハードコアに耳心地の良いメロディアスサウンド。強さと柔らかさを兼ね備えたアイルランドの90年代を代表するバンドといえばこのセラピー?だろう。94年に発表された『トラブルガム』は世界で50万枚のセールスを記録。U2以降久しかったアイルランドのロックバンドとして世界に挑戦を図ることになる。
アンディ・ケアンズ(vo&g)マイケル・マッキーガン(b)ファイフ・エウィング (ds) のトリオ編成でセラピーは生まれた。パンクを下敷きとしながらも、あからさまな表現を嫌った初期の彼ら。貪欲なまでにライヴを繰り返し、自らのオリジナリティを磨いてゆく日々の連続だったという。それはイギリスのみならず、デビュー前から既にアメリカにも渡りツアーを行っていることからも窺える。メジャーの1st『ナース』はそんな中で生まれたセラピー?の挑戦的なアルバムだった。ハードコアでぐいぐいと迫りまくり、逃げ場を決して用意してくれない。搾り出されるビートに時に耳を塞ぎたくなるほどのテンションを誇示していたのだ。
対して『トラブルガム』はビートを若干控えることやエッジの効いたギターをはっきりさせ、アンディのヴォーカルにメロディを載せた、所謂かなり”聴きやすい”タイプのアルバムに仕上がっている。1stのコアマニアは正直離れたらしいが、彼らの魅力がきちんと伝わり、新たなファンが増えたということは喜ばしいことだろう。やや直線的なパンク・ビートにきちんと味付けされた良質のメロディギターという曲の作りこみ方に彼らは完全にシフト・チェンジを行ったのだ。”Screamager"(#02)や"Nowhere"(#05)などは単調なパンクソングのようで下地のきちんとしたバンドにしか奏でることの出来ないテクニックとエモーショナルさをかね揃えているし、"Isolation"(#10)のようなへヴィーにねじ込めてくるミドルなナンバーも持っている。これこそ何層にも味わいを重ねたセラピー?しかもち得ない魅力となり、僕になんともいえない衝撃を与えるのだ。
だが、バンドはこの後メンバーが増えたり、メンバーチェンジが行われたりしたことでバンドの方向性が散漫になってしまった感覚は拭えない。トータルアルバムとしては『トラブルガム』と続く『インファーナル・ラヴ』の完成度が高すぎたせいもあるだろう。しかし、彼らは欲求心を隠すことなく新たな音楽性を開拓しようと今も必死に活動を繰り返している。苦悩の日々を抜けて、衝撃のサウンドを発表する日はそう遠くないのでは?と実は僕はワクワクしているのだ。
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