「ハーバード白熱教室」関連サイト
NHKのテレビ番組「ハーバード白熱教室」に関するサイトが面白い。検索すると結構な数のブログなどがヒットする。
「ハーバード~」は功利主義・リバタリアニズム(自由至上主義)とその問題点を取り上げるところから始まっていた。サンデル教授は同じくNHKで放送された「マネー資本主義」の中で、リバタリアンが主導するネオリベ(新自由主義)を激しく攻撃していた人だ。新自由主義は福祉政策に反対し、労働者や社会的弱者の人権を尊重しないので、一般にはリベラル派から責められることが多い。しかしサンデルの立ち位置はリベラリズム(自由主義)ではない。彼の主張は
「自由競争が社会を破壊した。」
「社会の目的は経済成長ではない。」
「消費者としてだけでなく市民として考えよう。」
「『公共』を取り戻そう。」
といったもの。これらはコミュニタリアニズム(共同体主義)に基づいている。共同体主義は自由主義の限界を克服しようとして生まれてきた思想で、共同体の連帯を重んじる。特にサンデルは共同体の「善」や「美徳」を重視する立場らしい。私は、高校でロールズまでは習った覚えがあるけれど、共同体主義を教えられた記憶はない。それもそのはず、共同体主義が哲学界に論争を巻き起こしたのは1980年代のこと。比較的新しい考え方と言える。
教授は番組の最終回で、どうしたら意見の異なる他者を尊重できる社会に到達できるのか、と問いかけていた。リベラルなら、他者の道徳観・宗教観を無視して、お互いそこに踏み込まないことだと答える。しかしサンデルは、他者の道徳と宗教に関心を持ち、コミットしていくことが他者を尊重することだと言う。それが多元的な社会の理念なのだと。講義の最後を飾る演説は感動的だったが、この力強さを勇敢と見るか高慢と見るか、意見は分かれるかもしれない。
個人的には、正義と「善」を切り離すリベラルの立場だが、リバタリアンに対抗するためには「善」の考え方が有効だと思う。ただし「称賛」や「名誉」に危険な側面があると考えているので、コミュニタリアンに同意できない部分がある。ベストセラーの書評にも同じような不安が読み取れる。確かに、人生に目的を与えてくれる「善」は魅力的だ。しかし一歩間違えると、奴隷に生きがいを抱かせ、特攻隊員に死にがい(?)を持たせることになるのではないか。決して“ムラ社会”にはならないとコミュニタリアンは強調するが、説得力に欠ける気がする。実際の問題として、多数者の少数者に共感する能力のなさ、異質な存在に対する不寛容さには目に余るものがある。正義のつもりで道徳を振りかざす最近の傾向に、うんざりしている人も多いのではないだろうか。
- 2010/10/02更新
- 2010/07/19登録
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