ヴァスラフ
その名を聞いてロシアの天才的バレリーノ、ヴァスラフ・フォミッチ・ニジンスキーを思い起こした方は半分正解。
ヴァスラフはロシア帝国の誇るオプティカル三次元回路素子で構成されたスーパーコンピューター上に存在する、ヴァーチャルリアリティ・キャラクターである。
バレリーナ/リーノの動きに反応し、最適な行動を取るだけのプログラムの塊はしかし、その出来映えの素晴らしさ故に、或いはそれに「宿った」何かにより、万人がその実在を信じ、羨望して止まない無類のバレリーノとして舞台に登場する。
精神を病んでいったニジンスキーを暗喩したのか、登場人物たちは皆次第にヴァーチャルとリアルの区別を失い、発狂して行く。
全編を通じト書きの文体は歌劇を意識してのことであろう。
斯様に本作は全編を通じてのメタファーと高野文緒お得意の歴史改編により、目眩めく幻惑感を演出することに成功した佳作である。SF好き、音楽小説好き、幻想文学好きに強くお薦めする。
ところで本書は図書館の「音楽」棚に評論書などと並んで置いてあったのだが、それは間違ってると思うぞ。ちゃんと読んで吟味するように>司書。
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