ヤミノコドモタチ
闇の子供たち
タイの幼児売買をテーマにした、梁石日のノンフィクション風の小説。こういうのを社会派小説というのだろうか?
性奴隷として、虐待され続ける、幼い子供たちや、日本の心臓病の子供のための臓器提供に売られていく子供たちの様子。8歳で売春宿へ売られ、2年間に渡って、体がバラバラになるほど、あらゆる犯されかたをし、苛酷な暴力と拷問をうけ、やがてエイズに感染して、地下牢のなかで汚物にまみれ、全身を斑点に覆われ生きながら腐っていく。そのまま生きたままごみ捨て場へ捨てられたところを、最後の力を振り絞ってもがき、ごみ袋からなんとか抜け出し、見覚えのある故郷の山々へ向かって裸で歩き始め、血まみれ、泥まみれになりながら、腐った残飯をむさぼって飢えをしのぎ、百キロも離れた故郷の村にたどり着いた、そこでは、「なんで帰って来たのか」、と、自分を売り飛ばした両親に邪魔者扱いされ、両親はエイズの感染を恐れてその女の子を檻にいれて飼うことにした。やがて、エイズが女の子を深くむしばみ、ある日、全身を真っ黒に蟻にたかられ、生きながら蟻に食われている娘を見つけ、父親がそれにガソリンを振りかけ、娘を生きながら焼く。この辺は、現実をよく描いていていいとおもうのだが、全体的に描きかたがソフトだ。この手の社会派文学作品では、どれだけ現実をリアルに描けるかが、とても重要だとおもうのだが、そこが、霞がかかったようで、どうも弱い。あまりきちんと描写すると、商業ベースにのらなくなってしまうからか?
とくに、日本人の心臓病の男の子への心臓移植手術のために、虐待され続けたタイの女の子が殺されたわけだが、そのシーンの描写もなければ、心臓を移植された男の子のその後の生活シーンや、元気になった男の子の幸せな家庭、母親の笑顔、父親の喜びの描写もない。だから、どうも物足りない。他者の人生を食い物して成り立っている日本人の幸せな家庭、という側面もあるわけで、そういう部分の文学的指摘があれば、もっと奥深い作品になったのではないかとおもう。ジャンルは違うが、現実の現実らしさ、という点では、花村満月の「じんじんじん」の方が、ずっとリアルな現実が描かれていて、文学的な感じがします。
- 2003/01/19更新
- 2003/01/19登録
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