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子供のときの話

7歳の長男が、眠るときに、「ねえ、お父さんの子供のときの話をして」と言う。


そうだなあ、何の話をしようかな。

お父さんが小学生のときはね、夕方になると、学校のグラウンドで「もうおうちに帰りなさい」という音楽が流れる。そうしたら、おうちに帰る。帰る途中、夕焼けが見える。カラスもおうちに帰る。

家に帰ると手を洗って、うがいして、晩御飯になる。晩御飯が終わると、畳の上にごろんと寝転ぶ。そうすると、そこには昨日読みかけた本が置いてあるから、続きを読む。お父さんもごろんと寝転んでいる。

    長男「おじいちゃんのことだね」

そう。お父さんのお父さんは、寝転びながらいろんな話をしてくれる。話をしながら、小さな紙に説明図を描くこともある。どうして電気は流れるのか。電話で音が伝わるのはどうしてか。
星のこと、月のこと。混ぜ合わせるとドカンと音がする薬のこと。お姉ちゃんもそこにいる。そんな話をしていると、お母さんはリンゴをむいてくれる。おばあちゃんは入れ歯を外したりする。

    長男「ぎゃはは」

7時のニュースが終わるころに、家族のみんなはそれぞれの部屋に行く。お父さんは書斎に行ってアマチュア無線をする。お母さんは食器を洗ってぱたぱた片付けものをする。おばあちゃんは寝床にいって、大音量でテレビの捕物帳を見る。お姉ちゃんは二階の部屋で勉強。そして私は、自分の部屋で本を読む。

九時になると、ニュースセンター九時を見ながら、また食卓でお茶の時間。それからお風呂。そして眠る。

――お父さんが子供の頃は、そんな毎日をおくっていたよ。同じようでいて、少しずつ違う。違うようでいて、何だか同じ。そんな毎日。

長男はもう眠っていた。

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結城浩

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