ブラームスの音楽の巨匠によるトラッド。そんな
ブラームス・ピアノ協奏曲第2番:バックハウスとベーム
私はヘソ曲がりです。ですから名盤の誉れ高いこの演奏を今回、はじめて聴いたのでした。驚いたのはヴィーン・フィルの音。弦セクションはよく歌いますが、現在の同オケよりもザラザラとした物質感があります。喩えればそれは葡萄酒の澱のような・・・。でもよく伸びて行く美音に変わりはありません。
そして、やはりと感じたのが、木・金管セクションの音。F調ホルン(F管)だけによる合奏時、特に強奏時に「ベー!!」という音質で響くそれです。ブラームスのこの曲には頻繁にホルンが登場します。オーボエもオールド楽器(独特の音色!!)で。いま現在のグローバリゼイションの波の下、ヴィーン・フィルとて例外とは言えません。どうしても演奏スタイル、音色の均質化は避けられません。が、この録音時(1967年)のヴィーン・フィルの音には、このオケ固有の暖色系の響きが聴きとれます。
ヴィルヘルム・バックハウスのピアノとカール・ベームの指揮。ここではふたりの演奏スタイル上での一致という観点で聴いたほうがいいかもしれません。
元々、ハンブルグ出身の作曲家であったブラームスの音楽の根底にある、北ドイツのオルガン音楽(「カノン」で有名なパッヘルベルはその代表的作曲家です)の管弦楽による模倣。もっともその響きは『第1ピアノ協奏曲ニ短調』のほうが聞き取り易いのですが、ふたりの巨匠は、オルガンのペダルの幅広く伸びる低音の模倣をずっしりと利かせ、必然的にテンポはゆっくりしたものとなります。とはいえ、遅すぎることもない。驚くほど自然に音楽が流れてゆく。そんなテンポ設定なのです。そして余計な修飾やわざとらしさがまったくないのが驚異です。
バックハウスも低音に重心をあずけ、しっかり鍵盤を深押しした重厚なピアノの音の響きを創りあげます。特に、第1楽章の第2主題(ヘ短調、再現部で変ロ短調)の弾き方などに、その特徴が顕著です。
そして繰り返しになりますが、現在の演奏にありがちな、妙に細部の構築にこだわるようなことがない。たとえば、第3楽章の再現部へと向かう、弦楽器の保持音の上を、ピアノが繊細な音を刺繍する、静かで美しい箇所など、ものすごくあっさりと演奏しています。でも十分に美しい。言ってみれば、一筆でサーッと流し書きする感じ・・・?
この曲はピア二スト泣かせ、なんです。画像にあるこの曲の楽譜をクリックして戴ければ分かりますが、ピアノの音が3オクターブ(両手で合計6オクターブ)に亘って跳躍したり、上下したりして、それが45分という曲の長さのなかで何度も現れるからです。バックハウスの技巧がホント、素晴らしい。
ブラームスの音楽のトラッドという観点からすれば、これほどそれにふさわしい演奏は無い。そんなCDかもしれません。
- 収録曲名:ブラームス『ピアノ協奏曲第2番変ロ長調』Op83
- 演奏:ヴィルヘルム・バックハウス(Pf) カール・ベーム指揮 ヴィーンフィル
- 録音年・場所:1967年 ヴィーン
- 発売元: London : Immortal Backhaus 1000
- 価格: 本来定価・¥1000
- 2010/09/05更新
- 2010/09/05登録
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